つくばエクスプレス総合基地

概要

つくばエクスプレス総合基地は、茨城県守谷市とつくばみらい市に広がる、首都圏新都市鉄道つくばエクスプレスの心臓部とも言える車両基地です。その略称は「TX総合基地」。つくばエクスプレスが開業した2005年に運用を開始し、広大な敷地面積は約19万平方メートルにも及びます。この基地は、つくばエクスプレスで運行される車両の安全と安定輸送を支える、多様な役割を担っています。

機能と役割

この総合基地の主要な機能は、車両の徹底した保守管理です。定期的な車両検査（列車検査、月検査、重要部検査、全般検査など）はもちろん、車両の清掃、車輪の整形（車輪転削）、急な故障に対応する臨時修繕などもここで行われます。また、つくばエクスプレス線の運転士を育成するための教習施設も設けられており、運転士の乗務員養成も基地の重要な役割の一つです。基地内の車両の移動は、自動運転ではなく手動で行われています。これらの業務の一部は、京成車両工業やJR東日本テクノロジーといった外部の協力会社に委託されており、専門的な技術連携のもとで車両の維持管理がなされています。

立地選定の理由

総合基地が守谷駅付近に設置されたのには、合理的な理由があります。守谷駅は、秋葉原方面からの直流電化区間と、つくば方面への交流電化区間が切り替わる境界に近い地点に位置しています（実際の電化方式の切り替え地点であるデッドセクションは、守谷駅とみらい平駅の間にあります）。つくばエクスプレスの車両には、直流専用のTX-1000系と、交流・直流両方に対応するTX-2000系、TX-3000系があります。守谷駅より南側であれば、これらの全ての車両が自力で走行して基地に入庫できるため、効率的に検査を行うことが可能です。一方、守谷駅よりも東京寄りは宅地開発が進んでおり、広大な土地を確保するのが困難でした。また、みらい平駅よりもつくば寄りは交流電化区間に入るため、直流専用のTX-1000系を回送する際に特殊な車両が必要となり不便が生じます。こうした地理的、技術的な制約を踏まえ、守谷駅付近が最適な場所として選ばれたのです。

構内設備

基地の構内には、多数の線路や施設が整然と配置されています。車両が基地に出入りするための入出庫線が2線あり、構内で車両を移動させるための引上線も備わっています。南側には保線機械置場や資材置場を擁する保守基地線があり、その北側に多数の留置線が広がっています。車両の洗浄を行う機械洗浄線や、車輪を削って形を整える車輪転削庫がある線路もあります。また、座席シートの清掃を行うシート格納庫や、車両の下部に付着した埃を高圧空気で吹き飛ばす床下洗浄庫なども備わっています。さらに、車両を詳細に点検・修理する検車庫や、大規模な修繕や改造を行う車両工場、車体更新場といった重要な施設が配置されており、多岐にわたる保守作業に対応できる体制が構築されています。

重要な改修と施設

開業当初、総合基地と守谷駅を結ぶ入出庫線は単線でした。しかし、万が一この線路で車両故障などが起きた場合、車両の出入りができなくなり、運行全体に大きな影響が出るリスクがありました。このリスクを低減するため、2013年度から入出庫線の複線化工事が進められ、2017年3月19日から複線での運用が始まり、安定性が大幅に向上しました。
また、老朽化した車両を長期間使用できるよう大規模な修繕を行うため、約40億円をかけて「車体更新場」が建設され、2017年10月2日から稼働しています。この車体更新場に設置されている電動シャッターは、水平引きシャッターとしてギネス世界記録に認定されており、その規模の大きさを物語っています。

イベント

つくばエクスプレス総合基地は、毎年11月上旬に開催される「つくばエクスプレスまつり」で一般公開されます。このイベントでは、普段立ち入ることのできない基地の内部を見学でき、鉄道ファンをはじめ多くの人々で賑わいます。イベント開催時には、基地まで直通する臨時列車が運転されることもあります。この臨時列車に乗車する際は、守谷駅までの乗車券が別途必要となるのが特徴で、交通系ICカードは利用できません。基地内には旅客ホームがないため、乗降時には一部のドアのみを使用するドアカットが行われます。また、例年同日には近隣を走る関東鉄道常総線の水海道車両基地でも一般公開が行われ、両基地を結ぶ連絡バスが運行されるなど、地域連携イベントとしても親しまれています。ただし、2015年は関東・東北豪雨の影響で水海道車両基地の公開が中止となり、つくばエクスプレスまつり会場に関東鉄道のPRブースが設置される代替措置が取られました。

事故

2019年2月28日には、基地内の留置線で車両の安全機能の確認試験中に、所定の停止位置を超過し線路終端の車止めに衝突、先頭車両が脱線する事故が発生しています。

つくばエクスプレス総合基地は、最新鋭のシステムと広範な設備を備え、つくばエクスプレスの安全運行を支える重要な基盤となっています。

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