つげ義春漫画術

つげ義春漫画術：漫画家と編集者の緊密な対話から生まれた貴重な記録

『つげ義春漫画術』は、漫画家・つげ義春と、彼の作品に深く関わってきた編集者・権藤晋氏による対談集です。上下巻構成で、1993年にワイズ出版から刊行されました。単なるインタビュー集ではなく、つげ義春の漫画創作の核心に迫る、貴重な記録となっています。

企画の背景：記憶を未来へ繋ぐ

権藤氏は、長年に渡り『ガロ』誌の編集者として、つげ義春氏の作品発表に携わってきました。数々の傑作を生み出した両者の関係は公私ともに深く、権藤氏はつげ氏から創作過程や物語の展開に関する話を数多く聞いてきました。その中で、権藤氏はつげ氏の漫画表現に独特の理論、いわば「漫画原論」が存在することに気づきます。

老いを感じるようになった権藤氏は、記憶が薄れる前に、つげ氏との貴重な経験を記録に残したいという強い願望を抱いていました。そんな折、ワイズ出版から「つげ義春の世界」に関する書籍刊行の打診があり、つげ氏も快諾。この企画は、二人の強い思いによって実現することとなりました。

本書の内容：創作への深い洞察

『つげ義春漫画術』では、『紅い花』『ねじ式』『夢の散歩』『必殺するめ固め』といった代表作をはじめ、多くの作品に関する詳細な話が語られています。単なる作品解説にとどまらず、創作のアイデアの源泉、キャラクター造形、独特な画風、ストーリー展開に至るまで、つげ氏の創作過程を多角的に探求しています。

権藤氏は、長年の経験から得た深い理解に基づき、鋭い質問を投げかけます。それに対して、つげ氏は自身の表現方法や漫画に対する考えを率直に語っています。読者は、単なるインタビューの枠を超えた、二人の息遣いが感じられるような、緊密なやりとりを垣間見ることができます。

構成と概要：上下巻でつげ義春の全貌に迫る

上巻と下巻で構成される本書は、それぞれ305ページと426ページにも及ぶ、ボリューム満点の内容となっています。上巻では、つげ氏の初期作品から代表作までの創作過程や、その背景にある思想、漫画表現論などが詳細に語られています。下巻では、さらに踏み込んだ内容や、つげ氏の個性的な表現方法について、より深く掘り下げています。

両巻を通して、つげ義春の独特な世界観や、その創作過程における思考、漫画表現へのこだわりが、余すことなく記述されています。単なる作品紹介にとどまらず、つげ義春の漫画家としての哲学や人生観にも触れることができる、まさに必読の一冊です。

出版情報

上巻:
サイズ：21.2 x 15.2 x 3.2 cm
ページ数：305ページ
発売日：1993年8月
ISBN：4-948735-18-3
下巻:
サイズ：21.4 x 15.4 x 3.8 cm
ページ数：426ページ
発売日：1993年10月
ISBN：4-948735-19-1

本書は、つげ義春の漫画作品を愛する人々だけでなく、漫画表現に興味を持つ人々にとっても、貴重な資料となるでしょう。 つげ義春の独特な世界観と、権藤氏による深い洞察によって紡ぎ出された本書は、漫画史に残る一冊と言えるでしょう。

もう一度検索