とけい座

とけい座（Horologium）

とけい座は、現代の88星座の一つであり、振り子時計をテーマとして18世紀半ばに設立されました。この星座は南半球に位置しており、日本の最南端にある波照間島からもその全貌を見ることはできません。特に、南天の星座の中では比較的新しい星座である点が特徴的です。

主な天体

とけい座に属する著名な恒星は、現在のところ国際天文学連合（IAU）によって公式に認められた固有名を持つ恒星は存在しません。以下は、注目すべき恒星のリストです：

• - α星：明るさ3.86等の橙色巨星であり、とけい座における最も明るい恒星です。
• - ι星：明るさ5.40等の5等星で、1999年には太陽系外惑星が発見されました。
• - R星：明るさが4.7等から14.3等まで変動するミラ型脈動変光星です。
• - GJ 1061：明るさ13.07等の赤色矮星で、太陽系から約12光年の位置にあります。

また、以下のような星団や銀河もこの星座に含まれます：

• - NGC 1261：Caldwell 87と呼ばれる球状星団。
• - NGC 1433：棒渦巻銀河。
• - NGC 1448：渦巻銀河。
• - NGC 1512：棒渦巻銀河。

由来と歴史

とけい座はフランスの天文学者ニコラ・ルイ・ド・ラカーユによって考案されました。彼は振り子時計をモチーフに星座を描き、その初出は1756年に刊行されたフランス科学アカデミーの紀要『Histoire de l'Académie royale des sciences』内の星図に見られます。この図には、振り子時計のデザインと共に「時計」を意味するフランス語の「l’Horloge」という名前が組み合わされていました。

ラカーユの死後、1763年に発行された『Coelum australe stelliferum』の中で、名称がラテン語の「Horologium」に改められました。その後も、1801年にはドイツのヨハン・ボーデが『ウラノグラフィア』を通じて「Horologium Pendulum」という名称を使用し、1899年にはアメリカの博物学者リチャード・ヒンクリー・アレンが『Star Names: Their Lore and Meaning』で「Horologium Oscillitorium」という名を取り上げましたが、ラカーユの原名である「Horologium」は根強く残り続けました。

1922年5月にはローマでのIAU設立総会において、現在の88星座の一つとしてとけい座が正式に認知され、以降その名称は「Horologium」と定められました。この新しい星座は、特に神話や伝説に関連づけられることはなく、その名は単純に振り子時計に由来しています。

呼称と方言

日本においては、この星座に対して「時計」という訳語が初めから充てられていました。1908年に刊行された日本天文学会の会誌『天文月報』には、「時計」として星図が確認でき、1925年の『理科年表』にも同様の訳名が引き継がれています。戦後、1952年に日本天文学会は「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」と定め、この時、「とけい」としての日本語名が定まりました。その後もこの名前が広く用いられるようになりました。

とけい座は、天文学の発展と共にその知名度を増しており、その独自の由来や背景は、星座の取り組みを深める良いきっかけとなります。

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