どんどん焼け

どんどん焼け

はじめに

「どんどん焼け」は、元治元年（1864年）7月19日（旧暦）に京都で発生した大規模火災の通称です。同日に勃発した禁門の変に伴う市街戦の中で引き起こされ、火の手が次々と広がる様子から命名されました。「元治の大火」や、戦闘中の鉄砲の音にちなむ「鉄砲焼け」とも呼ばれます。

火災の発生と被害

禁門の変の衝突が発生した長州藩邸周辺と堺町御門付近から火の手が上がりました。特に長州藩邸周辺からの火は、北東の強風にあおられ、市街地へと急速に延焼しました。
火災は京都御苑の西側から南東方向の広い範囲を焼き尽くし、その被害は甚大でした。記録によれば、京都市中の全1459町のうち約半数にあたる811町が焼失し、全49,414軒のうち27,517軒の家屋が失われました。人的被害も負傷者744名、死者340名に及びました。一方で、二条城などの幕府関連施設は被害を免れています。

火災の原因に関する諸説

この大火の原因については、複数の見解が存在します。従来は、禁門の変で敗れた長州藩兵が撤退時に長州藩邸に放火したことが主要因とされてきました。しかし、長州藩邸は早期に鎮火されたとする説や、薩摩藩兵による本能寺への砲撃、そして逃走兵が潜伏した家屋に対して幕府側諸藩や新選組が行った砲撃や放火が、延焼を拡大させた可能性を指摘する見方もあります。当時の町民の間では、会津藩や新選組による不必要な放火が原因であるという見方が強かったとする指摘もあります。大火は、禁門の変における複雑な戦闘状況と、それに続く幕府側勢力の行動が複合的に絡み合って発生、拡大したと考えられます。

その後の影響

どんどん焼けは京都の街と人々に深刻な影響を与えました。幕府による被災者救済は不十分で、市民の不満を高めました。一方で、騒乱を起こした長州藩に対する同情論が高まるという変化も見られました。幕府はこれを抑制するため長州批判の高札を立てましたが、これが後の三条制札事件につながりました。
市街地の荒廃は、明治天皇が東京へ行幸する一因とも言われています。
多くの寺院が焼失し、特に勤皇派に近かった本能寺や東本願寺などが被害を受けました。西本願寺は新選組の恫喝を受け、境内の建物を提供し、移転費用を負担することとなりました。
京都経済の中心であった町衆も大打撃を受けました。祇園祭は翌年中止、規模を縮小しての再開となりました。多くの山鉾が焼失し、その復興には長い年月を要しました。
六角獄舎では、火災による囚人逃亡を恐れた役人によって、判決未確定者を含む多数の囚人が斬首される悲劇も発生しました。

まとめ

どんどん焼けは、禁門の変という政治的事件が招いた未曽有の都市災害であり、京都の街並みや人々の生活に甚大な被害をもたらしました。その原因は複雑であり、幕末の動乱が都市にもたらした影響を示す象徴的な出来事として歴史に刻まれています。

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