にっぽん泥棒物語

にっぽん泥棒物語

『にっぽん泥棒物語』（にっぽんどろぼうものがたり）は、1965年に公開された日本の映画で、三國連太郎が主演し、山本薩夫が監督を務めました。この作品は、第16回ブルーリボン監督賞と日本映画記者賞を受賞し、同年のキネマ旬報ベストテン邦画でも4位にランクインしました。

概要

映画は、1960年に発生し1963年に全員無罪の判決が確定した松川事件を背景に、当時の弁護側証人の証言をコメディ仕立てでフィクションとして構成しています。タイトルに挙げられた事件は実際に存在したもので、目撃者の証言を具体的に再現する形で映画には組み込まれていますが、映画の意図は事件そのものの解明や被告の無罪を求めることではなく、様々なドラマとユーモアを通じて物語を展開させることに重点が置かれています。製作過程での調査により、ほぼ忠実に事件を描くための情報が収集され、松川事件そのものに関する文献が証言の根拠として使われました。

制作背景

プロデューサーは宮古とく子と東映の植木照男で、基本的にコメディとしての要素が色濃い作品ですが、歴史的な事実を挿入し、セミドキュメンタリー的な手法も使われています。特に、国鉄C51形蒸気機関車の模型などが再現され、リレーマーチのドキュメンタリー映像が挿入されることで、よりリアリティを持たせています。

主演の三國連太郎は、脚本を読んだ際に泥棒の話と松川裁判の組み合わせに疑念を抱きつつも、ストーリーに魅了され出演を決めたと語っています。また、花沢徳衛や伊藤雄之助をはじめとする多彩なキャストと、伝統的な演技陣が参加し、後にテレビで名を知られることになる俳優たちも短い役で登場しています。

あらすじ

物語は1948年、福島県の山間部に住む林田義助を中心に展開します。義助は定職もなく、父から受け継いだ器具を用いて「ニセ歯医者」を営む一方で、裏稼業として土蔵破りに手を染めています。やがて、彼は近くの財産家の情報を集めながら生活する内に、泥棒として名を馳せていきます。

義助が盗品を妻が売ってしまったことで逮捕され、刑務所で自転車泥棒と知り合います。彼の泥棒仲間との関わりや、逃亡劇が描かれ、事件当日の目撃証言を通じて冤罪の疑念が深まっていく様子が描写されます。最終的に彼は、裁判で自らの目撃証言を繰り返し語り、冤罪を明るみに出します。

実際の事件との関係

映画の中では実際の松川事件が「杉山事件」として扱われ、登場人物や地名が変更されていますが、重要なエピソードや証言は実際にあった出来事に基づいています。例えば、警察の捜査や労働組合の活動が描かれるシーンは、当時の社会情勢を反映したものとなっています。

興行成績と評価

本作は興行的には思わしくなく、映画界の潮流にも影響を与えました。作品の公開前後には、娯楽映画中心の作品が求められる中で、良心的な映画の制作が少なくなっていくなどの変化が見られましたが、本作はその中でも高い評価を受けていることが特徴です。

このように『にっぽん泥棒物語』は、社会問題をテーマにしたコメディ映画として、多くの人々に印象を残し続ける作品となりました。

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