ひきこもり探偵シリーズ

ひきこもり探偵シリーズ

坂木司による「ひきこもり探偵シリーズ」は、日常に潜む謎を解き明かす推理小説です。このシリーズは、デビュー作である『青空の卵』から始まる3部作で構成されており、日常の謎と同時に、事件を通して描かれる人間ドラマに重きを置いています。

概要

物語の中心となるのは、引きこもり生活を送る主人公の鳥井真一と、その友人である坂木司です。鳥井は自宅を拠点に在宅の仕事をし、生活圏は自宅から半径500メートル以内という範囲に限定されています。坂木は、日常で遭遇するちょっとした出来事や疑問、いわゆる「日常の謎」を鳥井に持ち込み、鳥井はその優れた推理力で解決していきます。

物語は坂木の視点で語られ、鳥井がその場で謎を解くこともあれば、坂木と現場に同行して解決の糸口を見つけることもあります。シリーズは2002年から2004年にかけて創元クライム・クラブから刊行され、2006年には創元推理文庫からも文庫版が刊行されました。シリーズ累計発行部数は、『切れない糸』創元推理文庫版時点で35万部、オーディオブック版『仔羊の巣』時点で40万部に達しています。

『青空の卵』と『仔羊の巣』は短編連作形式で、『動物園の鳥』は長編作品です。『青空の卵』単行本版には、作中の登場人物と同姓同名の人物による作者へのインタビューが収録されています。また、『青空の卵』に収録された「秋の足音」は、アンソロジー『きみが見つける物語』にも収録されています。各作品のタイトルには別名があり、『青空の卵』は「春の子供」、『仔羊の巣』は「野生のチェシャ・キャット」を意味する言葉、『動物園の鳥』はフランス語となっています。

『動物園の鳥』の巻末には、後日談である「白い日」と、作中に登場した料理のレシピが掲載されています。特に「白い日」で披露されたラスクのパンには、フランスパンが指定されている点が特徴です。

また、このシリーズに登場する人物と同一要素を持つ人物が、他の坂木作品にも登場しています。例えば、シリーズの舞台となる「商店街」は、『切れない糸』『和菓子のアン』『ウィンター・ホリデー』だけでなく、『仔羊の巣』にも登場します。ただし、「商店街」という共通点はあるものの、他の作品では「ひきこもり探偵」独自の要素は見られないため、同一の「商店街」であるかは不明です。

あらすじ

平凡なサラリーマンである坂木司の親友、鳥井真一は、家庭環境と学生時代のいじめが原因で人間不信に陥り、引きこもり生活を送っています。坂木は、そんな鳥井を少しでも立ち直らせようと、日常で起こる様々な出来事を彼に話します。すると、鳥井はそれらに隠された謎をいとも簡単に解いてみせるのです。二人は、この交流を通して様々な人々と出会い、交流を深めていきます。

主要な登場人物

鳥井 真一（とりい しんいち）: 引きこもりの名探偵である主人公。頭の回転が速く、わずかな情報から物事を推理する能力に長けています。幼少期のトラウマが原因で引きこもるようになりましたが、料理の腕はプロ級で、全国各地の銘菓を取り寄せるのが趣味です。
坂木 司（さかき つかさ）: 物語の語り手であり、鳥井の友人です。外資系保険会社に勤務するサラリーマンで、温厚な性格で涙もろい一面も。鳥井の才能を尊敬しており、彼のサポート役を自認しています。
滝本 孝二（たきもと こうじ）: 鳥井と坂木の高校時代の同級生で、現在は警察官として働いています。
小宮 弘幸（こみや ひろゆき）: 滝本の部下で、児童心理学に詳しい一面があります。
巣田 香織（すだ かおり）: デパート勤務のOLで、ある事件をきっかけに鳥井と坂木と知り合いました。美人ですが、男性恐怖症気味です。
木村 栄三郎（きむら えいさぶろう）: 細工職人で、坂木の会社の顧客でしたが、後に鳥井とも親しくなります。昔ながらの職人気質で、時には犯人を叱責する役も担います。

各作品の登場人物

青空の卵

塚田 基（つかだ もとい）: 視覚障害者で、ストーカー被害に悩む。
安藤 純（あんどう じゅん）: 女装をして塚田に付きまとう男。
中川 丈太郎（なかがわ じょうたろう）: 水産会社の社長。
中川 とし子（なかがわ としこ）: 丈太郎の妻。
佐藤 マリオ（さとう マリオ）: 隆之とマリアの息子。
佐藤 隆之（さとう たかゆき）: プロレスラーでマリオの父。
マリア・クレメンテ: 隆之の妻で、マリオの母。
ペドロ: マリアの知人。
鳥井 誠一（とりい せいいち）: 鳥井の父親。

仔羊の巣

吉成 哲夫（よしなり てつお）: 坂木の同僚。
佐久間 恭子（さくま きょうこ）: 坂木の同僚。
下島（しもじま）: 駅員。
斎藤（さいとう）: 駅員。
土屋 降介（つちや こうすけ）: 元地下鉄運転士。
寺田 結美（てらだ ゆみ）: 土産菓子の送り主。
檜山 利明（ひやま としあき）: 地下鉄で風船を持っていた人物。
土田 登（つちだ のぼる）: 檜山の旧友。
矢崎 明日香（やざき あすか）: 坂木を襲撃した女子高生。

動物園の鳥

高田 安次朗（たかだ やすじろう）: 木村の友人。
松谷 明子（まつたに あきこ）: 動物園のボランティア。
滝本 美月（たきもと みづき）: 滝本の妹。
江畑 憲満（えばた のりみつ）: 動物園の広報担当。
ガンちゃん: ホームレス。
谷越 淳三郎（たにこし じゅんざぶろう）: 鳥井と坂木の同級生。

メディアミックス

漫画

シリーズ第1作『青空の卵』が漫画化されました。作画は藤たまきが担当し、『ウィングス』（新書館）にて2009年から2013年にかけて連載されました。全2巻で、単行本には連載時に掲載されなかったエピソードも収録されています。

テレビドラマ

『青空の卵』は、2012年にBS朝日「ドラマインソムニア」枠でテレビドラマ化されました。阿久津愼太郎と井上正大がW主演を務めました。全9話で、原作のエピソードを基に、ドラマオリジナルの設定や変更が加えられています。また、ドラマに登場する料理や銘菓は、専門のフードコーディネーターや菓子屋が協力しました。主題歌はkeeno feat. ぐるたみんの「glow」です。

オーディオブック

オーディオブック版は、「kikubon」から西山宏太朗朗読でシリーズ全3作が、「FeBe」からは寺島愛朗読で『青空の卵』と『仔羊の巣』が配信されています。

評価

「仔羊の巣」単行本版の解説を担当したはやみねかおるは、物語を評価しつつも、個人的には主人公の鳥井が好きになれないと述べています。一方で、「仔羊の巣」文庫版の解説を担当した有栖川有栖は、過去の探偵像を例に挙げ、鳥井の受け入れがたさを擁護し、そこに「引きこもり」というテーマが込められていると解釈しています。

関連情報

マリオ
風の又三郎
恩賜上野動物園

外部リンク

ドラマ「青空の卵」公式サイト
ドラマ「青空の卵」番組紹介ページ
坂木司作品一覧
青空の卵のオーディオブック情報
仔羊の巣のオーディオブック情報
【初音ミクDark】glow【オリジナル】 - ニコニコ動画
【そんなふいんきで歌ってみた】glow【ぐるたみん】 - ニコニコ動画

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