ひなび（陽旅）

「ひなび（陽旅）」は、JR東日本が展開する観光列車ブランド「のってたのしい列車」のひとつとして、東北地方で親しまれている車両の愛称です。この愛称には、「ぬくもりを感じられる、ゆったりとした旅」への願いが込められています。

概要と導入経緯

「ひなび」は、東北地方で運行されていたHB-E300系「リゾートあすなろ」の2編成のうち、AH1編成として活躍していた車両をリニューアルしたものです。JR東日本におけるHB-E300系リニューアル車両の第1弾として、2022年11月にその導入計画が発表されました。その後、改造工事を経て、翌2023年12月から営業運転を開始しています。このリニューアル内容は、後に登場した観光列車「SATONO」にも共通して適用されています。

車両の改造内容

種車であるHB-E300系AH1編成は、JR東日本の秋田総合車両センターで大規模な改造工事を受けました。編成は2両で構成され、1号車はグリーン車、2号車は普通車として設定されています。このリニューアルに伴い、1号車の車両番号はHB-E302-3からHB-E302-703へと変更されました。

外観デザインは、かつてJR盛岡支社管内で運行されていた気動車に用いられた伝統的な配色（通称：盛岡色）を現代風にアレンジしたものです。白を基調とし、鮮やかな赤色がアクセントになっています。編成の中間部の車両には雄大な山並みが描かれ、その前後には波や花吹雪といった自然のモチーフが窓の下に配されています。また、車両全体にはお祝い事に使われる水引を思わせる帯があしらわれ、旅への期待感を高めるデザインとなっています。

内装についても、特に1号車は改造により以前の姿から大幅に生まれ変わりました。広々とした2+1列配置のテーブル付きボックスシートが設けられ、4人掛けが3組、2人掛けが5組配置されています。さらに、車窓をゆったりと楽しめる窓向きの1人掛け座席も3席設置されています。運転台のすぐ後ろにあるフリースペースと展望座席は引き続き利用可能で、特に連結面側には大型の荷物にも対応できる荷物置き場が新たに設けられました。2号車は、リクライニング可能な回転式クロスシートが2+2列配置されている点は改造前と同じですが、内装の配色などが変更され、落ち着いた雰囲気に刷新されています。ただし、運転台後方のフリースペースにあった展望座席は撤去されました。

運用状況

「ひなび」はJR盛岡車両センターに所属しており、その最初の営業運転は2023年12月23日・24日に盛岡駅と釜石駅の間で運行された団体専用列車「ひなび釜石デビュー号」でした。かつての「リゾートあすなろ」と同様、主に臨時列車として設定され、岩手県や青森県内を結んでいます。

2024年3月現在、快速列車として以下の3つのルートでの運行が基本となっています。

ひなび釜石: 盛岡駅～釜石駅間
ひなび宮古: 盛岡駅～宮古駅間
* ひなび下北: 八戸駅～大湊駅間

特に「ひなび釜石」は、惜しまれつつ運転を終了した観光列車「SL銀河」の後継となる役割も担っています。また、2024年11月には、岩手県の盛岡駅と秋田県の大館駅を結ぶ「ひなび八幡平」としても運行されるなど、多彩なルートで活躍しています。

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