塚田スペシャル

塚田スペシャル：短命に終わった超急戦

塚田スペシャルは、1986年に当時注目を集めていた若手棋士、塚田泰明八段が考案した将棋の戦法です。相掛かりという定跡から派生した超急戦であり、その斬新さと攻撃性から、一世を風靡しました。

戦法の概要と歴史

この戦法は、先手が飛車先を交換した後、後手の横歩取りを誘い込みながら、独自の攻め筋で一気に勝負を決めようとするものです。具体的には、後手が△3四歩や△6四歩と横歩を取ってきたところへ、先手が▲2四歩と合わせて再度横歩を取りにいく、という大胆な指し方が特徴です。

塚田スペシャルのルーツを探ると、1982年頃、吉田利勝七段らが類似の戦術を試みていたことが分かります。彼らは後手の横歩取りに対して、先手が1筋の歩を交換し、その後▲1五歩△同歩▲1三歩と攻めるという手順を研究していました。この手順は、後手の受け方を難しくする効果があり、当時の棋士たちを驚かせました。しかし、この段階ではまだ体系的な戦法として確立されていませんでした。

塚田八段は、これらの先駆的な試みを発展させ、より洗練された戦法体系を構築しました。彼は、後手の反応を的確に予測し、それに対応する独自の攻め筋を開発。公式戦で22連勝という驚異的な記録を達成し、一躍時代の寵児となりました。

対策の出現と衰退

しかし、塚田スペシャルの成功は長くは続きませんでした。1987年、米長邦雄九段対谷川浩司九段戦において、決定的な対策が発見されたのです。それは、△7二銀型という囲いから、6四の歩を取った後、△3四歩と角交換を狙うというものでした。この一手によって、塚田スペシャルの強力な攻めは封じ込められ、多くの棋士が塚田スペシャルを指すのをやめてしまいました。

塚田八段自身は、その後も新たな工夫を加えながら塚田スペシャルを指し続けました。しかし、1991年のA級順位戦で谷川九段が絶妙な対策を見せ、ついに塚田スペシャルは終焉を迎えます。

現代将棋への影響

塚田スペシャルは、わずか数年で消えてしまった戦法ですが、現代将棋の発展に少なからず貢献しました。その大胆な発想と攻撃的な姿勢は、多くの棋士に影響を与え、ひねり飛車などの新たな戦法の開発につながったとされています。また、塚田スペシャルの研究を通じて、相掛かりの急戦における様々な戦術が深まりました。

塚田八段自身の言葉

塚田スペシャルの考案者である塚田八段自身は、この戦法について、「まさかここまで深い戦法だとは思っていなかった」「本当の元祖は中村修九段である」と語っています。また、相手棋士が塚田スペシャルに乗ってくることが少なかったことにも触れ、「みんな冷たいんです」とコメントしています。これは、塚田スペシャルの攻撃的な性質ゆえに、相手がリスクを負うことを嫌がったためだと推測できます。

まとめ

塚田スペシャルは、短命に終わったものの、将棋史に名を刻んだ戦法です。その大胆な発想と、現代将棋に与えた影響は、今も語り継がれています。

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