ひまわり (絵画)

フィンセント・ファン・ゴッホの『ひまわり』

フィンセント・ファン・ゴッホが1888年8月から1890年1月にかけて制作した『ひまわり』は、花瓶に活けられたヒマワリをモチーフとする複数の絵画の総称です。これらの作品は、ゴッホが南フランスのアルルに滞在していた時期に集中的に描かれました。ゴッホにとって、ヒマワリは明るい南仏の太陽、そしてユートピアの象徴であったとされています。アルルでの制作活動が活発だった時期にヒマワリを盛んに描いていた一方、精神病院での療養が始まってからは描いていないことも、この解釈を裏付ける根拠の一つです。

作品群としての『ひまわり』

一般的に、『ひまわり』として知られる作品は、「花瓶に挿された向日葵をモチーフとした油彩の絵画」として定義される7点です。このうち、6点が現存しています。しかし、パリで制作されたものを含めると、花瓶に挿されていない構図も含まれるため、合計11点または12点とする説もあります。ここでは、主に「花瓶に挿された向日葵」という共通の構図を持つ作品群について解説します。

これらの作品が複数存在する理由として、ゴッホがアルルでの生活・制作拠点であった「黄色い家」の部屋を飾るためであったという説が有力です。ゴッホは、自身の作品『ルーラン夫人ゆりかごを揺らす女』を中心に、『ひまわり』の複数点を両側に展示するというアイデアを、手紙に記しています。このことから、『ひまわり』は単なる習作や不出来な作品のやり直しではなく、複数で展示されることを前提に制作されたと考えられます。

この展示構想は、2003年に損保ジャパン東郷青児美術館（現・SOMPO美術館）の企画展で実現しました。この企画展を通じて、ゴッホが『ひまわり』の複数点を制作した意図が明らかになりました。

7点の『ひまわり』

現存する7点の『ひまわり』は、構図こそほぼ同様ですが、描かれているヒマワリの本数には違いが見られます。具体的には、3本、5本、12本、15本と、様々な本数が描かれています。それぞれの作品で異なる本数のヒマワリを描くことで、ゴッホは作品に多様性と深みを与えています。

『ひまわり』が登場する作品

『ひまわり』は、アニメや映画など、様々な作品にも登場しています。

アニメ
GetBackers-奪還屋-: 作中では、『ひまわり』をはじめとする絵画を巡る戦いが繰り広げられます。
逃走中 グレートミッション: 第81話では、2027年に「幻の8枚目」が発見されたという設定で、『芦屋のひまわり』を除く全ての絵が贋作とすり替えられる事件が発生し、その奪還がミッションの対象となります。
映画
名探偵コナン 業火の向日葵: 鈴木次郎吉が購入した7つの『ひまわり』を展示する展覧会が舞台となり、怪盗キッドが『ひまわり』を盗むと予告するストーリーが展開されます。特に、鍵となる『芦屋のひまわり』は、現実では焼失したとされているものの、映画では隠されて海外に持ち出されたという設定で登場します。

まとめ

ゴッホの『ひまわり』は、彼の芸術的才能と情熱を象徴する作品群です。南仏の明るい太陽を捉えた色彩と、大胆な筆致は、見る者に強い印象を与えます。また、複数枚の『ひまわり』が存在することは、ゴッホが作品を通して伝えたかったメッセージをより深く理解する上で重要な要素となっています。

参考文献

吉屋敬『青空の憂鬱――ゴッホの全足跡を辿る旅』評論社、2005年。ISBN 978-4566050693。

関連項目

フィンセント・ファン・ゴッホの作品一覧

外部リンク

ひまわり SOMPO美術館

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