評論社

株式会社評論社：児童文学とファンタジーの出版社

1948年創業の株式会社評論社は、日本の出版業界において長年にわたり、質の高い書籍を世に送り出してきた出版社です。愛知県出身の竹下みな氏とご夫人の竹下郁代氏がその礎を築き、当初は専門書を多く扱っていました。しかし、内山賢次氏翻訳の『シートン動物記』の大ヒットを機に、学習参考書や、現在では同社の代表作ともいえる児童文学、ファンタジー小説へと、その出版領域を着実に広げてきました。

特に、J・R・R・トルキンの『指輪物語』の翻訳出版は、評論社の歴史において重要な位置を占めます。1972年から1975年にかけて瀬田貞二氏による翻訳で初めて日本で出版された『指輪物語』は、日本のファンタジー文学市場に大きな影響を与えました。現在、評論社から刊行されているのは瀬田貞二氏、田中明子氏共訳による1992年版の全10巻の文庫版です。

評論社は『指輪物語』以外にも、数々の名作を世に送り出しています。トルキンの他の作品である『シルマリルの物語』『ベレンとルーシエン』、さらに『農夫ジャイルズの冒険 トールキン小品集』など、ファンタジー文学の愛好家にはたまらないラインナップが揃っています。

児童文学においても、評論社は豊富な作品群を誇ります。イギリスの児童文学作家、ロアルド・ダールの作品集や、『プリデイン物語』『アトランティスから来た男』シリーズ、『ワーストウイッチ』シリーズ、『グリーン・ノウ』シリーズなど、多くの魅力的な作品が子どもたちを豊かな読書体験へと誘います。『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』や『児童図書館・文学の部屋』シリーズ（小さなバイキングビッケなど収録）といった、世代を超えて愛される名作も評論社のラインナップに含まれています。

このように、評論社は児童文学やファンタジー小説に重点を置きながらも、その出版活動は多岐にわたります。1970年代には『東洋人の行動と思想』といった社会科学系の書籍も刊行しており、幅広いジャンルの書籍を出版してきた歴史を持っています。また、『滑稽　古代中国の異人たち』（大室幹雄）、『李白と杜甫』（高島俊男）、『ガンディーとネルー』（山折哲雄）、『科学十話 上下』（藤田良雄訳）、『上原専禄著作集』（全28巻）など、人文科学、社会科学、自然科学にわたる専門性の高い書籍の出版にも携わってきました。

創業者である竹下みな氏は、2003年に逝去されましたが、その功績は現在も評論社の出版活動に受け継がれています。代表取締役社長である竹下晴信氏の元、評論社はこれからも、質の高い書籍を出版し、日本の出版文化の発展に貢献していくことでしょう。東京都新宿区に本社を置く評論社は、今後も、読者に感動と知の喜びを提供する出版社として、その歩みを続けていくことでしょう。

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