ぶたが逃げた

ぶたが逃げた

『ぶたが逃げた』（ぶたがにげた）は、作詞・宮沢章二、作曲および編曲・小田啓義によって制作された日本の楽曲である。歌唱は、当時「ブルー・コメッツ」名義で活動していたジャッキー吉川とブルー・コメッツが担当した。

本楽曲は、1968年10月から11月にかけてNHKの音楽番組『みんなのうた』で初めて紹介された。

番組内で使用された映像は、モノクロのアニメーション作品である。この映像を手がけたのは、イラストレーターとして著名な柳原良平である。柳原はサントリーの「アンクルトリス」のキャラクターデザインなどで広く知られているほか、『みんなのうた』においては、本楽曲以外にも『いいやつみつけた』や『トトトの歌』といった楽曲の映像制作を担当している。

楽曲の歌詞は、町へ売られていった親豚を追って、住み慣れた村から旅に出た一匹の子豚の物語が紡がれる。子豚は親に会いたい一心で逃げ出すものの、その道中では様々な困難に直面する。例えば、足の遅さをカラスに笑われたり、慣れない道で迷ってしまったりする。空腹に耐えかねて力尽き、その場に倒れ込む場面も描かれる。夜になり、心細さから涙をこらえながら道端で眠るなど、幼い子豚が孤独な旅の厳しさを経験する様子が詳細に歌われる。しかし、そうした試練の中でも、子豚は「明日はきっと誰かが自分を拾ってくれるだろう」と未来に希望を見出し、自らを励ましながら旅を続ける、健気な姿が表現されている。

歌唱を担当したブルー・コメッツは、グループサウンズとして人気を博していたが、当時NHKへの出演には特定の制限があったとされており、本楽曲が彼らにとって『みんなのうた』に出演した唯一の機会となっている。

『みんなのうた』での初回放送後、1969年2月から3月にかけて一度だけ再放送が行われた。また、1969年1月2日には特別番組『特集みんなのうた』の中でも再放送されている。長らく本楽曲の歌唱音源を再び聴く機会は限られていたが、NHKが視聴者から過去の音源や映像に関する情報提供を募る「みんなのうた発掘プロジェクト」を通じて、後に音源が提供された。これにより、2021年12月にはラジオ番組として再放送が実現している。

本楽曲のブルー・コメッツによる歌唱音源は、現在に至るまで公式に発売されたDVDやCDなどの媒体には収録されていない状況である。しかし、楽曲自体が全く聴けないわけではなく、日本放送出版協会（現：NHK出版）から発行された『NHKみんなのうた』の楽譜集第9巻には、本楽曲の楽譜が収められており、歌うことは可能である。さらに、世界文化社が発行する童謡集「ドレミファブック」シリーズには、俳優としても知られる熊倉一雄が歌唱したバージョンが収録されており、こちらの編曲は山内正治が担当している。

楽曲がテレビ番組のBGMとして使用された例も存在する。例えば、2016年12月24日に放送された日本テレビ系のバラエティ番組『エンタの神様』において、お笑いトリオである「我が家」のコントの背景音楽として本楽曲が使用されたことがある。

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