ぶどう酒 (ベルク)

アルバン・ベルク：演奏会用アリア『ぶどう酒』

アルバン・ベルクが作曲した演奏会用アリア『ぶどう酒』(Konzertarie "Der Wein")は、独唱と管弦楽のための作品です。題名は『ワイン』とも表記されます。シャルル・ボードレールの詩集『悪の華』をシュテファン・ゲオルゲがドイツ語訳した詩が用いられています。

作曲の経緯と作品の特徴

この作品は、オペラ『ルル』の作曲初期にあたる1929年春、ソプラノ歌手ルツェナ・ヘルリンガーからの委嘱によって作曲されました。ヘルリンガーは、モーツァルトの演奏会用アリアを例に挙げ、「オーケストラ付きのアリアかカンタータを現代の様式で書いてほしい」と依頼しました。ベルクは5月から8月にかけて作曲に取り組み、1930年6月4日にケーニヒスベルクで開かれた全ドイツ音楽協会の音楽祭にて、ヘルリンガーの独唱、ヘルマン・シェルヘンの指揮で初演されました。

1930年にはエルヴィン・シュタインによるピアノ伴奏編曲版が出版され、原曲が出版されたのは1966年でした。ベルクの伝記作家ハンス・レートリヒは、この作品が『ルル』への習作としての意義を持つと指摘しています。詩の選択、形式、音色、オーケストレーション、そして歌唱様式に『ルル』との共通点が見られます。オーケストラにはサクソフォーンとピアノが用いられ、ポピュラー音楽の語法も取り入れられています。

楽器編成

独唱（ソプラノまたはテノール）
フルート2（ピッコロ2持ち替え）
オーボエ2（コーラングレ1持ち替え）
クラリネット2
バスクラリネット
アルト・[[サクソフォーン]]
ファゴット2
コントラ[[ファゴット]]
ホルン4
トランペット2
トロンボーン2
チューバ
ティンパニ
大太鼓
小太鼓
タンバリン
シンバル（クラッシュ、サスペンデッド）
タムタム
ゴング（低音）
トライアングル
グロッケンシュピール
ピアノ
ハープ
弦五部

ソプラノ歌手のために書かれた作品ですが、ベルクはテノールによる歌唱も望んでいたと弟子のヴィリー・ライヒは述べています。

構成

演奏時間は15分前後です。

全体の構造は、ソナタ形式と三部形式の組み合わせと捉えることができます。ベルクは、5篇からなる原詩（ゲオルゲが翻訳したのは4篇）から、『ワインの魂』、『愛する者たちのワイン』、『孤独者のワイン』の3篇を選び、並べ替えています。この並べ替えにより、詩に対応したA-B-A'の形式が見られます。同時に、3篇の詩はソナタ形式の提示部、対比的なスケルツォ風の中間部、再現部とコーダにも対応しています。『愛する者たちのワイン』の後半に対して、その後のオーケストラによる後奏はシンメトリックに逆行するように書かれています。

十二音技法が用いられていますが、中心となる音列の前半6音はニ短調、後半のうち5音は変ト長調（嬰へ長調）の構成音でできており、後の『ルル』やヴァイオリン協奏曲と同様に、調性的な要素が導入されています。

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