べにばな (列車)

快速「べにばな」

「べにばな」は、東日本旅客鉄道（JR東日本）が新潟駅と山形県の米沢駅の間で運行していた快速列車です。主に白新線、羽越本線、そして米坂線を経由するルートで運転されていました。しかし、2022年8月に発生した豪雨災害による米坂線の不通を受け、現在は全区間での運行を休止しています。

列車の成り立ちとその役割

この列車の起源は、1960年に仙台駅と新潟駅を結ぶ準急列車「あさひ」に遡ります。「あさひ」という愛称は、米坂線沿線に連なる朝日連山にちなんで名付けられました。運転開始当初は2両編成でしたが、利用者数の増加とともに増発や増結が行われ、1966年には急行列車に昇格しました。

急行「あさひ」は、東北地方の主要都市である仙台、山形、新潟を結ぶ都市間連絡急行として、特に急行列車が長距離移動の中心だった時代には非常に重要な役割を果たしました。多層建て列車としても運行され、新潟と坂町の間では急行「羽越」と、仙台と山形の間では急行「月山」と、山形と米沢の間では急行「もがみ」や「千秋」といった列車と併結して運転されるなど、広範囲のネットワークを支える列車でした。

「べにばな」への改称と役割の変化

1982年11月15日、上越新幹線が開業しました。これにより、東北・上越方面を結ぶ速達列車の愛称として「あさひ」が使用されることになったため、在来線で運行されていた急行「あさひ」は、「べにばな」と名前を改めました。新しい愛称は、山形県の県花であり、地域の特産品でもあるベニバナに由来しています。

その後、社会インフラの整備が進むにつれて、列車の役割は徐々に変化していきました。米坂線に並行する国道113号線の整備による高規格化、山形新幹線建設に伴う奥羽本線の標準軌化、そして東北自動車道や磐越自動車道といった高速道路網の発達により、仙台・新潟間の広域都市間輸送における鉄道の優位性は相対的に低下しました。「べにばな」は、やがて米坂線沿線地域と新潟方面、および上越新幹線を結ぶ地域間連絡手段や、米坂線内のローカル輸送としての性格を強めていきました。

運行休止に至る経緯

2022年 8月3日、羽越本線および米坂線内で発生した集中豪雨により、米坂線の一部区間が甚大な被害を受け、長期不通となりました。これにより、「べにばな」は全区間での運転ができなくなりました。

不通区間を避け、被災しなかった新潟駅と坂町駅の間（白新線・羽越本線区間）では、2022年 8月11日から「べにばな」と同一時刻で臨時快速列車が運行されました。しかし、米坂線の復旧の見通しが立たない中、この臨時運行も2023年3月18日のダイヤ改正をもって終了しました。これにより、「べにばな」は定期列車の時刻表から正式に削除され、運行休止状態となりました。

休止直前の運行形態と車両

運行休止直前の2022年3月時点では、「べにばな」は1日1往復の運転でした。午前中に新潟発米沢行き、午後に米沢発新潟行きが設定されていました。停車駅は特徴的で、羽越本線内では特急「いなほ」に近い停車パターンで主要駅にのみ停車しましたが、米坂線内では全ての駅に停車していました。

使用された車両は時代によって変遷しており、過去にはキハ40系やキハ58系が使われていました。晩年は主に新津運輸区に所属するキハ110系が用いられていました。2018年3月まではキハE120形も使用されていましたが、ATS-Pの関係で新潟駅乗り入れが不可能になったため、それ以降はキハ110系2両編成に統一されました。2009年3月からは新潟駅 - 米沢駅間の全区間でワンマン運転が実施されていました。

沿革

- 1960年: 準急「あさひ」として仙台 - 新潟間で運行開始。
- 1962年: 「あさひ」1往復増発。
- 1966年: 急行に昇格。
- 1978年: 2往復とも6両化。
- 1982年: 上越新幹線開業に伴い「べにばな」に改称。
- 1985年: 運行区間を山形駅発着に変更し、快速「仙山」と系統分離。
- 1991年: 山形新幹線工事進捗により、米沢駅発着の快速列車に格下げ。
- 2001年〜2007年: 一部列車廃止や格下げを経て、1往復体制に集約される。
- 2009年: 車両をキハE120形・キハ110形に置き換え、全区間ワンマン運転開始。
- 2018年: 使用車両をキハ110形に統一。
- 2022年8月: 豪雨災害により全区間運休。新潟 - 坂町間で臨時快速運行開始。
- 2023年3月: 臨時快速終了、定期列車「べにばな」が運行休止となる。

長きにわたり、様々な形で米坂線や周辺地域の輸送を担ってきた快速「べにばな」は、現在、不通区間の復旧を待つか、あるいはそのまま歴史の一ページとなるか、その去就が注目されています。

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