ぼぎわんが、来る

小説『ぼぎわんが、来る』について

『ぼぎわんが、来る』は、著者澤村伊智が手掛けた日本のホラー小説で、2015年に初刊行されました。作品は、澤村が「澤村電磁」名義で書いた『ぼぎわん』が起源であり、第22回日本ホラー小説大賞にて大賞を受賞しました。その後、改題されて正式に出版されたものです。この作品は、霊媒師姉妹を主人公とした「比嘉姉妹シリーズ」の第一作でもあります。また、2018年には同作を原作とした実写映画が公開され、人気を博しました。

執筆の背景

著者澤村伊智は、2012年にフリーライターとして活動を開始しました。当初は短編作品を主に書き続けていましたが、34歳になった頃、自身初の長編小説に挑戦することを決意しました。この挑戦の背後には、作家都筑道夫の教えやゲスト作家である殊能将之の影響があったといいます。澤村は、最も好きなテーマである「怖い話」に魅了され、執筆した結果、友人から高く評価されたために日本ホラー小説大賞に応募することになりました。

作品の構成と視点

本作は、全3章から成り立っており、それぞれ異なる視点で物語が描かれています。第1章では、サラリーマンでイクメンの田原秀樹が主体となり、第2章では秀樹の妻である田原香奈、第3章ではオカルトライターの野崎昆が語り手として登場します。著者は、一人称視点での長編は難しいと感じ、語り手を三人に分けることで物語の展開にバリエーションを持たせました。

恐怖の表現

作品の鍵となる存在が「ぼぎわん」であり、澤村が独自に創作したおばけです。物語内では三重県に伝わる妖怪として位置づけられ、古文書でも言及されていますが、これは歴史的な伝承に基づいたものではありません。作中では、室町時代に宣教師により「ブギーマン」と名付けられたものが、日本人の発音と交じり合い「ぼぎわん」となったとされています。

澤村は、恐怖を描く際、単なる形や性格だけではなく、対象が「恐ろしい」とされること自体が恐怖へとの入り口だと考えました。このため、登場人物たちの反応に重点を置いた描写が行われています。

批評と評価

本作品は高い評価を受けており、日本ホラー小説大賞では全審査員からの支持を得て受賞に至りました。特に、得体の知れない脅威や人間の内部に潜む恐怖が描かれている点が評価されました。文芸評論家の東雅夫は、各章ごとの構造に工夫が施され、奇妙な恐怖が読者に感じられると指摘し、優れたホラー表現の一例としました。

あらすじ

主人公である田原秀樹は幼少期に遭遇した怪物「ぼぎわん」の影響を抱え、やがて新婚生活を送り始めます。しかし、神秘的な訪問者が現れたことで、彼の生活は一変し、周囲に常軌を逸した現象が起こるようになります。物語は、秀樹だけでなく、彼の家族や同僚たちにまで危険が迫る様を描いています。

登場人物

物語には多様なキャラクターが登場し、田原一家の人々は特に重要な役割を果たします。田原秀樹は新たな父として奮闘するサラリーマンであり、妻の田原香奈は育児に悩む日々を送っています。彼らの娘、田原知紗や祖母の田原志津も登場し、それぞれが物語の中で重要な役割を担います。また、オカルトライターの野崎昆も物語の鍵を握る存在です。

本作は、恐怖の正体が何であるのかを探求し、読者に常に不安と緊張感を与えるような作品となっています。

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