まめだ

落語「まめだ」について

「まめだ」は、上方落語の演目の一つであり、三田純市によって作られた新作落語です。この演目のタイトルとなっている「まめだ」とは、関西で親しまれている妖怪・豆狸を指すものであり、子ダヌキの意も含んでいます。1966年に三田が3代目桂米朝のために執筆したこの作品は、道頓堀地区に伝わる伝承を基にしており、秋を舞台にした人情噺です。

落語の背景

三田純市は、秋をテーマにした落語が少ないことに気がつき、独自の視点から新しい作品を作り出しました。この作品は民話の風味を持つ、人情に満ちた物語として評価されています。桂米朝自身は、「しっかりとしたオチのある落とし噺」と評しており、落語の伝統を受け継ぎながらも新たな試みがなされていることがうかがえます。

また、桂歌丸も米朝師匠から「まめだ」を習いたかったという逸話が残されており、歌丸は米朝の息子である5代目桂米團治に稽古をお願いしたものの、丁重に断られたという話が伝えられています。このように、米朝に寄せられる尊敬の念は非常に強く、作品の重要性を示唆しています。

あらすじ

物語は、歌舞伎役者・市川右團次の弟子である右三郎の視点から描かれます。右三郎は、母親が経営する膏薬屋「本家びっくり膏」で働きながら、母の作った膏薬を使い、自ら猛練習を重ねて、役者として成長していきます。

ある雨の夜、芝居茶屋で傘を借りた右三郎は、帰宅途中に傘が急に重くなる現象に遭遇します。これは何かの怪異であり、右三郎は思わず傘をつぼめてみるものの、何も目にすることはできません。彼は恐れを抱きつつも、「まめだ」の仕業だと考え、対策を講じることにします。彼が傘を持ってトンボを切った途端、地面に何かが叩きつけられ、悲鳴が聞こえ、黒い犬のようなものが逃げ去ります。

その後、店に帰った右三郎は母親から気になる話を耳にします。「最近、黒い陰気な丁稚が膏薬を買いに来るが、勘定が合わない」という内容で、右三郎は笑って済ませます。ところが、その丁稚はその後店に現れなくなります。

秋のある朝、右三郎が芝居小屋に出かけようとすると、近くの三津寺に人だかりができていることに気づきます。その理由は「境内に貝殻をつけたまめだが死んでいる」というものでした。実際に見てみると、その貝殻は「本家びっくり膏」の容器に使われているものであり、右三郎は直感的に、トンボを切った時のまめだの苦しみが関係していることに気づきます。

右三郎は「教えてくれなかったのか」と考えながら、哀れなまめだの境遇に同情し、母親や町の人々と共に簡単な葬儀を執り行います。住職が読経を始めると、突然秋風が吹き、銀杏の落ち葉がまめだの遺体を覆う情景が描かれています。最後に、右三郎は「タヌキの仲間から多くの香典が届いた」と言って、周囲を笑わせる場面で物語は締めくくられます。

この作品は、ただの楽しい落語にとどまらず、温かい人間関係や自然とのつながり、そして語り手としての人情が込められた深い物語として、多くの人々に愛されています。

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