三津寺

七宝山 大福院 三津寺：歴史と現代が融合する大阪の寺院

大阪市中央区心斎橋筋に位置する三津寺は、真言宗御室派の準別格本山です。山号を七宝山、本尊を十一面観音菩薩とするこの寺院は、地元住民からは親しみを込めて「みってらさん」あるいは「ミナミの観音さん」と呼ばれています。御堂筋に面したその立地は、古都大阪の歴史と現代の活気を同時に感じさせる独特の雰囲気を醸し出しています。

歴史：古の創建から現代への継承

三津寺の起源は古く、奈良時代の難波宮遷都の際に、行基によって開創されたと伝えられています。応神天皇の墓所に当たる地に、行基が楠を植えたことが始まりとされ、天平16年（744年）には聖武天皇の勅命により、行基自身の手によって御堂が建立されたという歴史を持ちます。「七宝山」という山号は、小松宮が寺を訪問された際に下賜されたものだと言われています。また、「大福院」という院号は、行基四十九院の一つ、大福院を指し、三津寺の前身であるとする説もあります。

寺院名は、かつてこの地が「三津（御津）」と呼ばれていたことに由来します。中世には荘園「三津寺荘」が成立し、地名と寺院名が互いに影響し合う興味深い歴史を辿ってきました。大坂の陣以前は三津寺村でしたが、島之内の開発に伴い大坂三郷に含まれるようになりました。江戸時代から平成元年（1989年）2月までは、寺院南側の三津寺筋に沿って「三津寺町」という町名が存在していました。現在では町名としては消滅していますが、御堂筋との交差点名としてその名を残しています。

文禄年間（1592年～1596年）には賢愚による中興を経験する一方、寛政3年（1791年）には火災により焼失。その後、文化5年（1808年）に本堂が再建されました。大正3年（1914年）には、明治45年（1912年）に焼失した末寺である松林庵とその墓地を合併しています。昭和8年（1933年）の御堂筋拡張工事では、境内の約4割が接収され、楠の大樹も伐採されました。しかし、この楠の材を用いて現在の本尊である十一面観音像（秘仏）が彫られました。この拡張工事において、当時としては珍しい地上3階地下1階の鉄筋コンクリート造りの庫裏が新築されています。太平洋戦争中の大阪大空襲では、周辺が焼夷弾による大火災に見舞われましたが、本堂と庫裏は奇跡的に被害を免れました。

近年の改修と複合施設「東京建物三津寺ビルディング」

近年、本堂の老朽化や保存、庫裏の改修といった課題を抱えていた三津寺は、東京建物との共同事業により、画期的な解決策を打ち出しました。2019年12月から2023年4月にかけて大規模な改修工事が行われ、本堂を覆う形で地上15階地下3階のビル「東京建物三津寺ビルディング」が建設されました。この複合施設にはホテルや商業施設も併設され、事業収益を寺院の維持管理に充てる計画です。文化5年（1808年）に再建された本堂は、新築ビルの3層吹き抜けピロティ空間に曳家されました。さらに、昭和8年以前の姿を復元するため、軒の修復や向拝（唐破風）の撤去が行われ、その部材の一部は境内の出入口の装飾として再利用されています。ビル内には物販店舗のほか、2023年11月26日には「カンデオホテルズ大阪心斎橋」が開業しました。

境内と文化財

三津寺の境内には、本堂の他に人見堂、前堂、裏堂、そして昭和8年再建の鉄筋コンクリート造3階建ての庫裏、表門などが残されています。境外には、船場の商人や芸人の墓碑が多くある三津寺墓地松林庵、道頓堀を開削した安井道頓の墓、浄瑠璃「艶容女舞衣」で有名な三勝・半七の供養塔などがあります。また、三津寺仏像群（23点）と三津寺仏画群（63点）は、大阪市指定有形文化財に指定されています。摂津国八十八箇所霊場、大坂三十三観音霊場にも含まれており、古くから信仰を集めてきた歴史を示しています。

アクセス

Osaka Metro御堂筋線なんば駅または心斎橋駅から徒歩約6分と、アクセスも良好です。

歴史と現代が融合した三津寺は、大阪の街の歴史と文化を肌で感じられる貴重な場所となっています。

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