みずいろの手紙

みずいろの手紙：あべ静江の代表曲とその波乱に満ちた歴史

1973年9月25日、あべ静江さんの2枚目のシングル「みずいろの手紙」が発売されました。この曲は、彼女の代表作として現在も広く愛され続けており、日本の音楽史に名を刻む一曲と言えるでしょう。

記録的大ヒットと紅白初出場

「みずいろの手紙」は、発売後瞬く間にヒットチャートを駆け上がり、累計売上は約26.4万枚を記録しました。デビュー曲「コーヒーショップで」に続く大ヒットとなり、彼女の歌手としての地位を確固たるものにしました。このヒットを受けて、1974年には第25回NHK紅白歌合戦に初出場を果たします。紅白での歌唱では、冒頭のセリフを「お元気ですか？そして今でも愛していると、言って下さいますか？」から「全国の皆様、お元気ですか？そして今年も紅組が勝つと、言って下さいますね？」と、当時を反映したアレンジで歌い上げました。さらに、フランス出身のギタリスト、クロード・チアリ氏が特別ゲストとしてギター伴奏を担当するなど、豪華な演出も話題となりました。

あべ静江と「みずいろの手紙」：複雑な感情の軌跡

興味深いことに、あべ静江さん自身は当初この曲に強い嫌悪感を抱いていたそうです。2015年のインタビューでは、「男性に媚びたような、私が嫌いなタイプの女性の思いを綴った詞だと思ってしまって…歌うのを封印していた時期もありました」と語っています。しかし、ある日ステージで久しぶりに「みずいろの手紙」を歌った際、聴衆が涙する姿を見て、自身の考えを改めました。「自分はとんでもない間違いをしていたんだと反省しました。一度歌って世に出したものなんだから、自分のものとして扱っちゃダメなんですよね。聴いてくれる人の思い出とつながっているんだから、もう私の歌ではない。そのことに気づいてから、ひとつの作品として素直に歌の世界に入り込めるようになりました」と、彼女の心境の変化を語っています。2017年の『徹子の部屋』出演時にも、レコーディング時の苦悩や、聴く人の反応から得た深い反省、そしてこの曲が自身の歌手としての成功に大きく貢献したことを明かしています。

時代の流れと音楽的評価

「みずいろの手紙」は、1973年という時代背景を反映した、繊細かつ切ないラブソングです。阿久悠さんの作詞、三木たかしさんの作曲・編曲による楽曲は、時代を超えて聴く人の心に響く普遍的な魅力を持っています。歌詞は、遠距離恋愛中の女性の心情を巧みに表現しており、当時の若者たちの共感を呼んだと考えられます。

多くのアーティストによるカバー

「みずいろの手紙」は、あべ静江さん自身の歌声だけでなく、多くのアーティストによってカバーされています。浜田朱里さん（1982年、アルバム「想い出のセレナーデ」収録）、岩崎宏美さん（2014年、アルバム『Dear Friends VII 阿久悠トリビュート』収録）など、世代を超えたアーティストたちがこの曲を新たな解釈で歌い継いでいます。それぞれのアーティストによる個性豊かなアレンジが、楽曲の多様な魅力を引き立てています。

2013年ニューバージョンと楽曲の継承

2013年には、あべ静江さん自身の歌声による「みずいろの手紙」と「コーヒーショップで」のニューバージョンが、ミニアルバム『いちばん、好きだから』に収録されました。このニューバージョンは、時を経てなお色褪せることのない楽曲の普遍的な魅力を改めて示しています。

まとめ

「みずいろの手紙」は、単なるヒット曲にとどまらず、あべ静江さんの音楽人生、そして日本の音楽史において重要な位置を占める楽曲です。その背景にある複雑な感情、時代を超えた普遍性、そして多くのアーティストによって歌い継がれる力強さ。これらすべてが、「みずいろの手紙」という一曲に凝縮されています。この曲は、これからも多くの人々の心に響き続け、歌い継がれていくことでしょう。

もう一度検索