もぐさ

もぐさ（艾）とは

もぐさとは、キク科の植物であるヨモギの葉の裏にある繊毛を精製したものです。主に灸の施術に使用され、その温熱効果によって身体の不調を整える目的で用いられてきました。西洋でも「moxa」としてその名が知られています。

もぐさの生産

もぐさの主な原料はヨモギ（学名: Artemisia princeps Pamp.）ですが、一部ではオオヨモギ（ヤマヨモギ、学名: A. montana Pamp.）も使用されます。

中国では、棒灸という間接的に皮膚を温める方法が一般的で、中国産のモグサはヨモギの香りが強く、外見の色も若干緑がかっているのが特徴です。中国では、ヨモギを粉砕機で細かくした後、長通しという工程で繊維を集める方法で製造されます。

一方、日本では直接灸（特に透熱灸）が発展したため、モグサ燃焼時の最高温度が高くならないように、精製度の高いモグサが求められました。日本の農家は6月中旬頃からヨモギの葉を採取し、2～3日間天日干しにして業者に納入します。その後、加熱乾燥させたヨモギの葉を石臼でひき、葉裏の絨毛のみを取り出すために、長通しや唐箕といった道具を使って仕上げます。日本のモグサ製造は、農閑期にあたる11月下旬から3月下旬にかけて行われてきました。これは、石臼でひく際に熱を持たせないためでもあります。

日本の最高級モグサは、精製度が約3%と非常に高いのが特徴です。中国産の中にも精製度の高い製品（約2.2%）がありますが、製造方法の違いから葉肉部分が残存しており、日本のモグサとは使用感に違いがあります。

伊吹もぐさ

「伊吹もぐさ」は、優良なもぐさの代名詞として知られています。江戸時代の元禄年間には、伊吹山（滋賀・岐阜県境）の麓で生産される江州伊吹モグサがその地位を確立しました。

また、ヨモギの古名またはもぐさを「さしもぐさ」といい、百人一首に収められた藤原実方朝臣の歌にも詠まれています。

かくとだに えやは伊吹の さしもぐさ さしも知らじな 燃ゆる思ひを

この歌に詠まれた伊吹山については諸説ありますが、下野国（栃木市）の伊吹山であるという説が有力です。能因法師や契沖も、この説を支持しています。また、どちらの伊吹山にも近隣に「しめじが原」という名の土地があり、修験者によって下野から近江に技術が伝えられたとする説もあります。

滋賀県の伊吹山山麓がヨモギの産地となったのは江戸時代からで、江戸後期からは新潟県が主な産地となりました。

もぐさの成分

もぐさの主成分は、毛茸と線毛で、これには精油（テルペン、シネオール、ツヨン、コリン、アデニン）、タールなどの芳香成分が含まれます。その他、水分（11%）、線維（67%）、たんぱく質（11%）、類脂質（4～5%）、無機塩類（灰分、4～6%）、ビタミンB、ビタミンCなど、様々な成分が含まれています。

もぐさの用途と種類

灸用

日本では、直接灸が主流であるため、特に精製度の高いモグサが生産されてきました。灸施術のために皮膚上に置く円錐形のモグサの塊を「艾炷（がいしゅ）」と呼びます。日本のモグサは、精製度によって点灸用、灸頭鍼用、温[[灸]]用に分類されます。

また、「せんねん灸」などの加工品も販売されています。中国では、棒灸という間接的に皮膚を温める方法が一般的です。

その他の用途

もぐさは、朱油を含ませて朱肉の印池としても用いられます。

脚注

注釈

出典

関連項目

セネファ
山正

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