シネオール

シネオール（ユーカリプトール）：多様な用途を持つ天然有機化合物

シネオール、別名ユーカリプトールは、自然界に広く存在する有機化合物です。環状エーテル構造を持つモノテルペノイドの一種に分類され、1,8-シネオール、リモネンオキシド、カジェプトールとも呼ばれています。消防法では第4類危険物 第2石油類に指定されています。

物理的性質と化学的性質

無色から淡黄色の澄明な液体で、特徴的な樟脳様のさわやかな香りを持っています。味はすっきりとしており、芳香剤としての用途にも適しています。しかし、空気中に長時間放置すると、褐色に変色し、一部が樹脂化する性質があります。化学的には、p-メンタン誘導体であり、IUPAC系統名は1,8-エポキシ-p-メンタンです。

天然での存在

シネオールは、ユーカリ属植物の精油に特に多く含まれており、ユーカリ・ポリブラクテアなどでは含有率が90％に達することもあります。この高い含有率が、ユーカリプトールという別名の由来となっています。ユーカリ以外にも、ローリエ、ヨモギ、バジル、ニガヨモギ、ローズマリー、セージといった植物の葉からも抽出可能です。ユーカリ精油の蒸留によって、99.6％から99.8％という高純度のシネオールを得ることができます。

さまざまな用途

シネオールは、その心地よい香りや味から、食品添加物、香料、化粧品などに広く利用されています。口中清涼剤やせき止め薬などの医薬品にも配合され、清涼感を与えたり、炎症や痛みを和らげる効果が期待されています。

近年では、白血病細胞に対する殺傷作用や、副鼻腔炎治療への効果についても研究が進められています。また、シタバチ類のオスはシネオールなどのテルペノイドを収集し、フェロモン合成に利用しているという興味深い報告もあります。そのため、シタバチ類の研究においては、シネオールを用いた捕集方法が用いられることがあります。さらに、ユーカリ精油はチリダニの駆除にも有効であると考えられています。

ただし、ティーツリー精油など、医療用途に用いる場合は注意が必要です。シネオールには粘膜や皮膚への刺激性があるため、含有量が少ない方が好ましく、高品質のティーツリー精油ではシネオールの含有量は5％未満に抑えられています。

まとめ

シネオールは、その香り、味、そして多様な生理活性から、食品、医薬品、化粧品など幅広い分野で利用されている重要な天然有機化合物です。しかし、その刺激性にも留意し、適切な使用方法を心がけることが重要です。今後の研究により、さらなる有用性が明らかになる可能性も秘めています。

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