もっこ (ニシン運搬)

もっこについて

もっことは、江戸時代後期から昭和前期にかけて、北海道や樺太のニシン漁場で使用された、人力でニシンを運ぶための木製の背負い箱です。漢字では「畚」と表記され、漁村の重要な道具としての役割を果たしました。

もっこの構造

もっこの形状は逆三角形で、一般的なサイズのものでは、約120から130匹、または30から34キログラム分のニシンを収容できる設計になっています。たとえば、1935年に増毛町で使われたもっこのサイズは、上部口幅が61センチメートル、下部幅が33センチメートル、厚さは上部で33センチメートル、下部で18センチメートルで、長さ67センチメートル、幅30センチメートルの背板が設けられていました。この背板はリュックサックや背負子のように、背負うための縄で結び付けられています。

ニシンが大量に捕れる時期には、漁師だけでなく、地域の女性や子供たちも運搬作業に従事したため、その体格に応じた様々なサイズのもっこが用意されました。特に、「釜焚畚」と呼ばれる大型のもっこは、鰊粕製造に用いられ、通常のもっこよりも大きかったです。たとえば、1925年には積丹町神崎で用いられたもっこは、上部口幅81センチメートル、下部幅45センチメートル、厚さ上部29センチメートル、下部26センチメートルといった規格で、140〜170匹の生ニシンを積むことができました。この釜焚畚6から7杯分で、約千匹の鰊を運ぶことが可能になります。

さらに、もっこの他にも「たなぎもっこ」と呼ばれる長方形の木箱も存在し、こちらは前後に持ち手が付いており、2人で持ち運ぶ形状をしています。このたなぎもっこは、江戸時代中期に描かれた「江差檜山屏風」にも描かれており、歴史的な道具としての価値を示しています。

使用方法

ニシンの捕獲は、沖合に仕掛けた定置網で行われます。捕獲されたニシンは、運搬用の船「汲み舟」に移され、防波堤に接岸した後に、もっこを使って運び始めます。岸には長さ6メートル、幅45センチメートルの歩み板が2枚用意され、その間を「行き」と「帰り」の通路として使います。背負いもっこを担いだ女性たちが船に乗り込み、漁師が小型のタモ網でニシンを投げ込みます。この際、もっこの中央部にある背板は、投げ込まれるニシンから運搬係の頭を保護する役割も持っています。

ニシンがモッコに満載されると、漁師は「ヨシ」と声をかけ、運搬が開始されます。もっこを背負う仕事は主に女性が行い、漁師との間で思いを伝えるためにニシンの投入量を調整することもあったと言われています。運搬は早朝から夕方続き、時には大漁のために深夜まで及ぶこともありました。

労働と報酬

もっこを使った運搬作業は、非常に重労働であり、港とロウカ（漁港）間を往復しながらニシンを運び入れました。体を傾けて運ぶことで、スムーズにニシンを排出することができました。作業中の食事は、握り飯やこざなかのたくあんを歩きながら食べることが多く、疲れきってニシンを背負ったまま寝る者さえ出るほどでした。

報酬は「貰いモッコ」と呼ばれるニシンの現物支給で、沖へ出る漁夫は1日7、8モッコ、専門の男女はそれぞれ6モッコを運び、他の作業員たちは4モッコを受け取ります。一方、タモ立てと呼ばれる仕事の人たちは、重労働のため、9から10モッコの報酬を受け取ることができました。受け取ったニシンは、各自で身欠きにしんや鰊粕に加工し、換金することができました。

参考文献

• - 小平町史編集室『小平町史』、1976年。
• - 内田五郎『鰊場物語』、1978年。
• - 山田健、矢島睿、丹治輝一『北海道の生業2 漁業・諸職』、1981年。
• - 北海道民具事典編集委員会『北海道民具事典 Ⅱ』、2020年。

関連項目

• - 鰊御殿
• - 鰊場作業唄

外部リンク

モッコ背負いの女性像について

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