もっと強く抱きしめたなら

WANDSの代表曲「もっと強く抱きしめたなら」：ミリオンセラーと楽曲制作秘話

1992年7月1日、WANDSから3枚目のシングル「もっと強く抱きしめたなら」がリリースされました。この曲は、WANDS単独名義としては最大のヒットを記録し、最終的に166.3万枚を売り上げるミリオンセラーとなりました。

三井生命CMソングとしての成功

浅野温子が出演した三井生命のCMソングとして起用された「もっと強く抱きしめたなら」は、CMで使用されたバージョンとシングルバージョンではアレンジが異なっています。CMバージョンではコーラスパートが省略されている点が大きな違いです。シングル発売から約2ヶ月後の9月18日には、テレビ朝日系『ミュージックステーション』で初披露され、その後も10月末と翌1993年1月にも同番組に出演し、この曲を披露しました。

オリコンチャートでの快進撃と異例なヒットパターン

オリコンチャートでは、初登場47位とまずまずのスタートでしたが、後に発売された中山美穂とのコラボ曲「世界中の誰よりきっと」のヒットも追い風となり、注目を集めることになります。そして翌年、29週目にして遂にオリコン1位を獲得。その後も勢いは衰えず、順調に売上を伸ばし、WANDS初のミリオンヒットを達成しました。このヒットは、当時の音楽シーンに大きなインパクトを与えました。

楽曲の制作背景と歌詞

この楽曲の作詞には、興味深いエピソードがあります。作詞は上杉昇と、CMに出演した浅野温子の夫である魚住勉が共同で行いました。魚住が元となる歌詞を書き、それを上杉が自身の言葉に置き換えるという、独特な手法が用いられています。上杉はそれまで、自身の日常生活におけるフラストレーションを歌詞に吐き出すようなスタイルでしたが、爽やかな雰囲気のこの曲と、新しい作詞方法に最初は戸惑いを感じたそうです。

メンバーは、最初にこの曲を聴いた際に安らぎをテーマにしようという意見で一致し、制作が進められました。タイトルは、魚住の歌詞の中にあった「もっと強く抱きしめたなら」というフレーズを気に入り、そのままタイトルに採用されました。上杉は、2016年のインタビューでWANDS時代を振り返り、「鼻ピアスにチェーンをしていたような自分に、こんな爽やかな曲をプロデューサーが歌わせるとは思ってなかった」と語っており、自身のイメージと楽曲のギャップを面白おかしく表現しています。

2020年には、WANDS第5期メンバーによるリメイクバージョン「もっと強く抱きしめたなら ～WANDS 第5期 ver.～」が、16枚目のシングル「真っ赤なLip」のタイアップ盤カップリングとして収録されました。このバージョンでは、タイトルとは少し異なる「もっと強く君を抱きしめたなら」という歌詞が使われています。

ミュージックビデオと収録アルバム

ミュージックビデオ(MV)は、第1期と第2期の2種類が存在します。第1期MVの撮影場所には、イントロ部分で一瞬ですが東京都庁と東京タワーが登場します。また、サビの部分は幕張海浜公園の大芝生広場が撮影場所となっています。この第1期MVは、映像集『BEST OF [[WANDS VIDEO HISTORY]]』に収録されています。

「もっと強く抱きしめたなら」は、多くのアルバムに収録されています。代表的なアルバムとしては、『時の扉』(別バージョン収録)、『SINGLES COLLECTION+6』、『WANDS BEST 〜HISTORICAL BEST ALBUM〜』(リミックス・バージョン収録)などがあります。

大島康祐参加最後のシングル

このシングルは、ギタリストの大島康祐が参加した最後の作品でもあります。彼のギターソロは、シングルバージョンとアルバム『時の扉』収録バージョンとで異なっているという点も注目に値します。また、『時の扉』収録バージョンは、以前NHKで放送されていたフィラー番組『MUSIC BOX 1990年代編』でBGMとして使用されていました。

「もっと強く抱きしめたなら」は、WANDSの代表曲として、そして日本の音楽史においても重要な一曲として、今なお多くの人々に愛され続けています。その背景には、多くの人の努力と、偶然の出会い、そして時代背景が複雑に絡み合っていると言えるでしょう。

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