SINGLES COLLECTION+6

WANDSの軌跡を凝縮した決定版ベストアルバム『SINGLES COLLECTION+6』

1990年代、日本の音楽シーンを席巻したロックバンドWANDS。その中でも、ボーカリスト上杉昇と作曲家柴崎浩という黄金タッグによる楽曲群は、多くのリスナーの心に深く刻まれています。そんなWANDSの第2期、上杉と柴崎が共に活動した最後の作品として発表されたのが、初のベストアルバム『SINGLES COLLECTION+6』です。

本作は、単なるシングル集としてだけでなく、WANDSの歴史、そして上杉と柴崎のクリエイティビティを凝縮した、まさに決定版と言える一枚です。上杉昇のオフィシャルサイトにも掲載されている、WANDS在籍時の公式ディスコグラフィーにおける最後の作品であり、彼らが認めた唯一のベストアルバムという点において、その重要性を改めて認識させられます。

発売当初は、5thアルバムというナンバリングが用いられていましたが、2019年のWANDS再始動後には、このナンバリングは撤廃されました。これは、このアルバムが単なるアルバムの一つではなく、WANDSの歴史の中で特別な位置を占める作品であることを示していると言えるでしょう。

音質へのこだわりと充実の収録内容

『SINGLES COLLECTION+6』最大の特徴は、全曲に施されたクリアな低音のデジタル・リマスタリングです。これにより、楽曲の音質が格段に向上しており、まるで新たにレコーディングされたかのような鮮度を感じることができます。デビュー曲「寂しさは秋の色」から代表曲「世界が終るまでは…」までの全シングルを網羅し、聴きなじんだ楽曲たちが、よりクリアでパワフルなサウンドで蘇ります。

ただし、シングルカットされた「Secret Night 〜It's My Treat〜」、「Same Side」、「WORST CRIME〜About a rock star who was a swindler〜」は収録されていません。ベストアルバムという枠組みにおいて、選曲には独自の基準が用いられたと言えるでしょう。

豪華パッケージと充実のブックレット

音楽性だけでなく、パッケージにもこだわりが感じられます。CDケースを収納できるプラスチック製の青いボックスに、楽曲の世界観を表現した写真が収められたフォトブックレットが付属。所有する喜びを高める、細やかな配慮が行き届いています。

各楽曲の魅力と背景

収録されている楽曲の一つ一つには、WANDSの歴史、そして上杉と柴崎の創作過程が深く関わっています。例えば、「恋せよ乙女 〜Remix〜」は、アルバム『Little Bit…』への収録が予定されていたものの、柴崎の腱鞘炎により延期され、本作に収録されることとなりました。また、未発表曲「白く染まれ」も収録されており、ファンにとって貴重な音源となっています。

シングルバージョンとは異なるアレンジが施されている楽曲も多く、例えば「時の扉」はシングルバージョンではサビでフェードアウトするのに対し、アルバムバージョンでは最後まで演奏されています。こうしたアレンジの違いも、本作の魅力の一つと言えるでしょう。

批評家の視点

音楽専門誌『CDジャーナル』は、本作について、「ほとんどのシングルがヒットしているだけあって、聴いたことのある曲ばかり。と同時に、ボピュラリティとクオリティの両立に彼らのキャパシティの広さを感じてしまう。」と評しています。これは、WANDSが商業的な成功と音楽的なクオリティを両立できた稀有なバンドであったことを示しています。

まとめ

『SINGLES COLLECTION+6』は、単なるベストアルバムを超えた、WANDSの歴史、そして上杉昇と柴崎浩による黄金時代の集大成と言える作品です。リマスタリングされた高音質サウンド、貴重な未発表曲、そして魅力的なパッケージングは、多くのリスナーを魅了することでしょう。WANDSファンはもちろんのこと、90年代J-POPファンにも強くお勧めしたい、まさに必聴の一枚です。

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