よきすすめの聖母

よきすすめの聖母：奇跡の聖母子像と信仰の広がり

「よきすすめの聖母」(Mater boni consilii)は、聖母マリアの数ある称号の1つであり、イタリア、ローマ近郊ジェナッツァーノの聖アウグスチノ教会に伝わる聖母子像を指す名称でもあります。この聖母子像は、13世紀に発見された40cm×45cmの小さなフレスコ画で、非常に薄い石膏層に描かれています。その神秘的な出現と数々の奇跡の報告から、聖母マリアへの深い信仰を集め、世界中にその名が広まりました。

ジェナッツァーノと聖アウグスチノ教会

ジェナッツァーノは、5世紀以来サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂への多額の寄付に見返りとしてサンタ・マリア教会が建てられた歴史を持つ街です。1356年には聖アウグスチノ修道会が教会の管理を引き継ぎ、数々の奇跡の治癒が報告されるようになり、巡礼地として栄えました。現在もアウグスティヌス会の修道士たちが巡礼者たちの霊的指導にあたっています。

奇跡の出現と伝承

言い伝えによると、1467年、「聖マルコの祝日」の最中、雅やかな音楽と共に不思議な雲が教会を包み込み、未完成だった壁に聖母子像が現れました。まるでアルバニアのシュコドラの教会から超自然的に運ばれてきたかのように、人々はその奇跡に驚き敬虔の念を抱きました。当初は「天国の聖母」と呼ばれていましたが、現在では「よきすすめの聖母」として広く知られています。

この奇跡の聖母子像は、ローマ教皇ウルバヌス8世やピウス9世による巡礼、そしてイノセント11世による戴冠式など、歴代のローマ教皇からも深い信仰と敬意を払われてきました。アロイシウス・ゴンザーガやヨハネ・ボスコといった聖人たちも、この聖母像と深い関わりを持っていたと伝えられています。

絵画としての聖母子像と歴史

1957年から1959年にかけて行われた修復作業で、この聖母子像は布で覆われ、漆喰で描かれたことが判明しました。さらに、より大きな絵画の一部を切り取って作られた可能性も指摘されており、15世紀初頭、教皇マルティヌス5世時代の芸術家ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノによる作品であるとする説もあります。

ピウス・ユニオンとスカプラリオ

1753年にはローマ教皇ベネディクトゥス14世により「よきすすめの聖母」のピウス・ユニオンが設立され、教皇レオ13世も熱心に崇敬していました。1893年には聖アウグスチノ修道会がレオ13世に小型の白いスカプラリオを献上し、教皇はこれを承認し、着用者に免償を与えました。

祈りと言葉

1903年、レオ13世は「よきすすめの聖母」の称号を聖母マリアの連祷に加え、「善き勧めを賜う御母」としました。ピウス12世もまた、この聖母への深い信仰を持ち、特別な祈りを捧げました。

信仰の広がり

聖アウグスチノ修道会は「よきすすめの聖母」への信仰を広める活動に尽力し、多くのカトリック関連機関がこの称号を冠するようになりました。現在でも4月26日は「よきすすめの聖母」の祝日として世界各地で祝われています。この聖母子像とそこに込められた信仰は、時代を超えて人々の心に寄り添い続けています。

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