われに撃つ用意あり
1990年11月17日に公開された日本映画、『われに撃つ用意あり』は、異色の経歴を持つ若松孝二が監督を務めた作品です。松竹と若松プロダクションの共同製作、松竹配給により、カラー、ビスタサイズ、上映時間106分で公開されました。
この映画は、新宿・歌舞伎町を舞台にしたハードボイルドアクションです。原作は佐々木譲の小説『真夜中の遠い彼方』で、後に『新宿のありふれた夜』と改題され再発売されています。主演には原田芳雄と桃井かおりがキャスティングされ、ヒロイン役には香港からルー・シュウリンが起用されました。追われる身となったベトナム難民の女性と、過去を背負いながら彼女を匿うことになる男、そして彼らを追跡するヤクザや刑事たちの物語が展開します。
1990年、ベトナム難民であり華僑のメイランは、タイで購入した偽造パスポートを利用して日本へ入国し、新宿・歌舞伎町で喫茶店の店員として生活していました。しかし、オーバーステイという弱みを地元の暴力団、桜道会に握られ、風俗店へ売り飛ばされる寸前まで追い詰められます。桜道会の組長に暴行されそうになったその時、メイランは組長の拳銃を奪い、彼を射殺して逃走します。この逃走の際に、桜道会の犯罪現場を隠し撮りしたビデオを持ち出したと疑われ、ヤクザから激しい追跡を受けることになります。
歌舞伎町でバーを経営する郷田克彦は、店を閉めることを決め、長年の常連客を招いてお別れパーティーの準備をしていました。そこへ、傷を負ったメイランが逃げ込んできます。克彦は、多くを語らないまま、傷ついたメイランを店に匿うことを決めます。パーティーに集まってきた常連客たちは、実は克彦と共に20年前の学生運動で機動隊と激しく渡り合った、元全共闘の仲間たちでした。
メイランには、どうしてもタイへ渡らなければならない理由がありました。彼女の兄はベトナム軍の脱走兵で、あと二日後にはタイの難民キャンプからベトナムへ強制送還されることが決まっていたのです。兄を救うための保釈金を持っていたメイランは、明日にもタイへ飛ぶ必要があり、そのための偽造パスポートを手配していました。偽造パスポートを受け取るため、克彦の店をこっそり抜け出したメイランでしたが、後を追ってきた克彦は、ヤクザに追われる彼女の姿を再び目の当たりにし、彼女の国外脱出を手助けすることを決意します。しかし、桜道会は克彦の店を襲撃し、メイランを無理矢理連れ去ってしまいます。
一方、組長殺害事件を捜査する新宿署の有本刑事は、犯人が外国籍の女性らしいという情報を掴んでいました。克彦は、かつての恋人である律子や、元全共闘の仲間たちの協力を得て、ヤクザのアジトからメイランを取り戻すため、激しい銃撃戦を繰り広げます。何とかメイランを救出することに成功しますが、彼らの行く手には既に有本刑事が立ちはだかっていました。メイランを無事空港へ向かわせるため、克彦は銃を手に、刑事たちの前に立ちはだかる覚悟を固めます。
本作は、企画・製作を若松孝二が手掛け、プロデューサーは清水一夫が務めました。脚本は丸内敏治、音楽は梅津和時です。撮影は伊東英男、田中一成、佐久間栄一らが担当しました。主演の原田芳雄（郷田克彦）、桃井かおり（李津子）、そしてヒロインのルー・シュウリン（ヤン・メイラン）を中心に、西岡徳馬（有本刑事）、麿赤児（桜田組長）、石橋蓮司（秋川）、蟹江敬三（軍司浚平刑事）ら個性豊かな俳優陣が脇を固めています。特に石橋蓮司と蟹江敬三は、本作での演技が高く評価され、賞を受賞しています。
主題歌は「新宿心中」、挿入歌には「魂の1/2」が使用され、いずれも作詞：阿木燿子、作曲：宇崎竜童、編曲：中村暢之、そして主演の原田芳雄が歌唱しています。また、ボブ・ディラン作詞・作曲の「風に吹かれて」や、佐賀紀三江が歌う「女一代」も挿入歌として使用されています。
公開された1990年度の映画賞で、本作は多くの賞を受賞し、高い評価を受けました。
第33回ブルーリボン賞（1990年度）：原田芳雄が主演男優賞を、『浪人街』と合わせて受賞しました。
第3回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞（1990年）：原田芳雄が主演男優賞を、『浪人街』と合わせて受賞しました。
第14回日本アカデミー賞：石橋蓮司が最優秀助演男優賞を、『公園通りの猫たち』『浪人街』と合わせて受賞しました。
第64回キネマ旬報ベスト・テン（1990年度）：日本映画部門で第6位に選出されました。
第12回ヨコハマ映画祭：日本映画ベストテンで第2位を獲得。若松孝二と原田芳雄が特別大賞を受賞し、蟹江敬三が助演男優賞を『ぼくと、ぼくらの夏』と合わせて受賞しました。
第45回毎日映画コンクール：石橋蓮司が男優助演賞を受賞しました。
本作は、1990年11月17日に、松竹系の配給劇場にて、広木隆一監督・斉藤慶子主演の『さわこの恋 上手な嘘の恋愛講座』と二本立てで同時公開されました。
社会の片隅で生きる人々の姿を描きつつ、ハードボイルドアクションとしての魅力を放つ本作は、主演俳優をはじめ多くのキャスト・スタッフが高く評価された一作と言えるでしょう。
作品概要
この映画は、新宿・歌舞伎町を舞台にしたハードボイルドアクションです。原作は佐々木譲の小説『真夜中の遠い彼方』で、後に『新宿のありふれた夜』と改題され再発売されています。主演には原田芳雄と桃井かおりがキャスティングされ、ヒロイン役には香港からルー・シュウリンが起用されました。追われる身となったベトナム難民の女性と、過去を背負いながら彼女を匿うことになる男、そして彼らを追跡するヤクザや刑事たちの物語が展開します。
ストーリー
1990年、ベトナム難民であり華僑のメイランは、タイで購入した偽造パスポートを利用して日本へ入国し、新宿・歌舞伎町で喫茶店の店員として生活していました。しかし、オーバーステイという弱みを地元の暴力団、桜道会に握られ、風俗店へ売り飛ばされる寸前まで追い詰められます。桜道会の組長に暴行されそうになったその時、メイランは組長の拳銃を奪い、彼を射殺して逃走します。この逃走の際に、桜道会の犯罪現場を隠し撮りしたビデオを持ち出したと疑われ、ヤクザから激しい追跡を受けることになります。
歌舞伎町でバーを経営する郷田克彦は、店を閉めることを決め、長年の常連客を招いてお別れパーティーの準備をしていました。そこへ、傷を負ったメイランが逃げ込んできます。克彦は、多くを語らないまま、傷ついたメイランを店に匿うことを決めます。パーティーに集まってきた常連客たちは、実は克彦と共に20年前の学生運動で機動隊と激しく渡り合った、元全共闘の仲間たちでした。
メイランには、どうしてもタイへ渡らなければならない理由がありました。彼女の兄はベトナム軍の脱走兵で、あと二日後にはタイの難民キャンプからベトナムへ強制送還されることが決まっていたのです。兄を救うための保釈金を持っていたメイランは、明日にもタイへ飛ぶ必要があり、そのための偽造パスポートを手配していました。偽造パスポートを受け取るため、克彦の店をこっそり抜け出したメイランでしたが、後を追ってきた克彦は、ヤクザに追われる彼女の姿を再び目の当たりにし、彼女の国外脱出を手助けすることを決意します。しかし、桜道会は克彦の店を襲撃し、メイランを無理矢理連れ去ってしまいます。
一方、組長殺害事件を捜査する新宿署の有本刑事は、犯人が外国籍の女性らしいという情報を掴んでいました。克彦は、かつての恋人である律子や、元全共闘の仲間たちの協力を得て、ヤクザのアジトからメイランを取り戻すため、激しい銃撃戦を繰り広げます。何とかメイランを救出することに成功しますが、彼らの行く手には既に有本刑事が立ちはだかっていました。メイランを無事空港へ向かわせるため、克彦は銃を手に、刑事たちの前に立ちはだかる覚悟を固めます。
スタッフ・キャスト
本作は、企画・製作を若松孝二が手掛け、プロデューサーは清水一夫が務めました。脚本は丸内敏治、音楽は梅津和時です。撮影は伊東英男、田中一成、佐久間栄一らが担当しました。主演の原田芳雄（郷田克彦）、桃井かおり（李津子）、そしてヒロインのルー・シュウリン（ヤン・メイラン）を中心に、西岡徳馬（有本刑事）、麿赤児（桜田組長）、石橋蓮司（秋川）、蟹江敬三（軍司浚平刑事）ら個性豊かな俳優陣が脇を固めています。特に石橋蓮司と蟹江敬三は、本作での演技が高く評価され、賞を受賞しています。
主題歌・挿入歌
主題歌は「新宿心中」、挿入歌には「魂の1/2」が使用され、いずれも作詞：阿木燿子、作曲：宇崎竜童、編曲：中村暢之、そして主演の原田芳雄が歌唱しています。また、ボブ・ディラン作詞・作曲の「風に吹かれて」や、佐賀紀三江が歌う「女一代」も挿入歌として使用されています。
受賞歴
公開された1990年度の映画賞で、本作は多くの賞を受賞し、高い評価を受けました。
第33回ブルーリボン賞（1990年度）：原田芳雄が主演男優賞を、『浪人街』と合わせて受賞しました。
第3回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞（1990年）：原田芳雄が主演男優賞を、『浪人街』と合わせて受賞しました。
第14回日本アカデミー賞：石橋蓮司が最優秀助演男優賞を、『公園通りの猫たち』『浪人街』と合わせて受賞しました。
第64回キネマ旬報ベスト・テン（1990年度）：日本映画部門で第6位に選出されました。
第12回ヨコハマ映画祭：日本映画ベストテンで第2位を獲得。若松孝二と原田芳雄が特別大賞を受賞し、蟹江敬三が助演男優賞を『ぼくと、ぼくらの夏』と合わせて受賞しました。
第45回毎日映画コンクール：石橋蓮司が男優助演賞を受賞しました。
同時公開
本作は、1990年11月17日に、松竹系の配給劇場にて、広木隆一監督・斉藤慶子主演の『さわこの恋 上手な嘘の恋愛講座』と二本立てで同時公開されました。
社会の片隅で生きる人々の姿を描きつつ、ハードボイルドアクションとしての魅力を放つ本作は、主演俳優をはじめ多くのキャスト・スタッフが高く評価された一作と言えるでしょう。
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