アイアン・デューク級戦艦

アイアン・デューク級戦艦

アイアン・デューク級戦艦は、イギリス海軍が第一次世界大戦前に建造した超弩級戦艦です。このクラスは、13.5インチ（34.3cm）砲を主砲とする最後の戦艦であり、4隻が1912年から1914年にかけて就役しました。ネームシップである「アイアン・デューク」は、ワーテルローの戦いでナポレオンを破った初代ウェリントン公爵アーサー・ウェルズリーにちなんで命名されました。

概要

本級は、キング・ジョージ5世級の改良型として、1911年度の海軍計画で4隻が建造されました。兵装面では、副砲に15.2cm速射砲を採用しましたが、これは従来の10.2cm速射砲が列強の主力艦と比較して威力不足であったためです。当時の海軍卿であったジョン・アーバスノット・フィッシャーが単一砲論者であったため、超弩級戦艦の時代に入っても主砲の口径強化は抑制されていましたが、彼の辞任によりようやく副砲の強化が可能になりました。

しかし、副砲の大型化は排水量の増加を招き、結果として甲板防御が薄くなるという代償を払いました。また、副砲の配置も問題があり、初期の舷側ケースメイト配置は波浪の影響を受けやすく、後に配置転換を余儀なくされました。一部の意見では、副砲の大型化は戦闘に役立たず、むしろ艦側面の穴は二次爆発の危険性があったと指摘されています。また、中口径砲は小型の護衛艦艇に搭載した方が効果的であるという主張もありました。しかし、年々大型化する駆逐艦への対抗や、軽巡洋艦不在時に敵水雷戦隊を撃退する火力は必要とされており、副砲の強化は時代の要請でした。

防御面では、前級の装甲配置を継承しつつも範囲を拡大しましたが、水線下の装甲は水雷隔壁と石炭庫でカバーする程度でした。

艦形

本級の船体形状は、高い乾舷を持つ長船首楼型で、外洋での凌波性は良好でした。艦首は、イギリス式設計の特徴である水線下部が前方に突き出した形状で、浮力を確保していました。主砲塔は前向きに2基が配置され、その後ろに司令塔と船橋構造を持つ艦橋がありました。2本の煙突は間隔が狭く、その周囲に艦載艇が配置されていました。3番主砲塔は中央部に後向きに配置され、後部甲板には高角砲が設置されていました。

副砲は、艦首側の5基は波浪の影響を受けにくい高所にありましたが、艦尾側の2基は位置が低く、波浪の影響を受けやすいという問題がありました。これは、敵駆逐艦の艦影が水平線上に浮かんで見えるという誤った確信に基づいたもので、後に配置換えが行われました。第一次世界大戦中にマスト長が短縮され、艦橋構造が多層化されました。また、探照灯台や後部マスト、副砲測的所などが追加されました。1918年には、2番・4番主砲塔に陸上機用のプラットフォームが設置されました。

練習艦への転換

ロンドン海軍軍縮条約により、本級は戦艦から除籍されました。しかし、ネームシップの「アイアン・デューク」のみは練習艦として保有が認められました。装甲の撤去や一部ボイラーの撤去、主砲門数の削減などの改装が行われました。この際に、後部甲板に高角砲が追加され、ボイラーは重油専焼缶に改造されました。武装・装甲の削減により排水量は減少しました。練習艦時代には対空火器の実験に使用されましたが、1939年に主砲・副砲が陸上砲台に供出され、最終的には7.6cm高角砲2門と4.7cm速射砲4門となりました。

武装

主砲: 1912年型 Mark V 34.3cm（45口径）砲を連装砲塔に搭載。射程は最大21,710mで、9,144mで318mmの舷側装甲を貫通可能でした。
副砲: 1910年型 Mark VII 15.2cm（45口径）速射砲を搭載。射程は最大13,350mで、人力による装填が必要でした。発射速度は1分間に5～7発でした。
その他: 7.6cm（45口径）高角砲2基、4.7cm（40口径）単装機砲4基、53.3cm魚雷発射管4門を装備。

防御

本級は全体防御方式を採用しており、水線部の舷側全体に装甲が張られていました。水線中央部は152mmから305mm、艦首・艦尾部は102mmから152mmの装甲で防御されていました。主砲塔やバーベット、司令塔も装甲で防御されていましたが、甲板防御は比較的薄く、ユトランド沖海戦の戦訓から、後に弾薬庫上面に増加装甲が追加されました。水雷防御としては、水線下の防御隔壁が設けられていましたが、不十分な点が実戦で露呈しました。

戦歴

ベンボウ、アイアン・デューク、マールバラはユトランド沖海戦に参加しました。「マールバラ」は魚雷攻撃を受けて大破しましたが、その経験から防御面の弱点が明らかになりました。エンペラー・オブ・インディアは1931年に標的艦として沈没しました。ベンボウは1929年、マールバラは1932年にスクラップとして売却され、アイアン・デュークは練習艦として使用された後、1946年に解体されました。

各艦の艦歴

アイアン・デューク: 1912年起工、1914年就役。砲術練習艦に転換後、1946年解体。
ベンボー: 1912年起工、1914年就役。1931年解体。
マールバラ: 1912年起工、1914年就役。地中海艦隊や大西洋艦隊で活動後、1932年解体。
エンペラー・オブ・インディア: 1912年起工、1914年就役。1931年標的艦として沈没後、解体。

関連項目

イギリス海軍艦艇一覧
戦艦一覧

参考文献

「世界の艦船 増刊第22集　近代戦艦史」（海人社）
「世界の艦船 増刊第83集　近代戦艦史」（海人社）
「世界の艦船 増刊第30集　イギリス戦艦史」（海人社）
「Conway All The World's Fightingships 1906–1921」（Conway）
「Conway All The World's Fightingships 1922-1946」（Conway）

外部リンク

Battleship 'Iron Duke' (1912)
MaritimeQuest Iron Duke-class overview

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