アイライ州

アイライ州

パラオ共和国を構成する行政区画の一つ、アイライ州（Airai）は、同国最大の島であるバベルダオブ島の南岸に位置しています。州の面積は約44平方キロメートルにおよび、人口は2015年の国勢調査時点で2,455人であり、これはパラオ国内の州としては、首都コロール州に次いで2番目に多い規模となっています。アイライ州は、パラオ唯一の国際空港であるロマン・トメトゥチェル国際空港が置かれているほか、隣接するコロール州とは正式名称「日本・パラオ友好の橋」（旧称KBブリッジ）で結ばれており、国内外への交通の要衝としての役割を担っています。

地理と集落

アイライ州の地形は、海岸部から内陸部にかけて山がちな地域が広がっていることが特徴です。州の主要な集落であるアイライ町は、2005年時点の人口が920人で、これはパラオの州都であるコロール州内の集落を除けば、国内で最も人口が多い町として知られています。地理的に首都コロールに近接しているため、アイライ州はコロールへ通勤・通学する人々が多く居住する、いわゆるベッドタウンとしての性格も強く持っており、日常生活においてコロールとの結びつきが深い地域です。

歴史と文化

アイライ州には、パラオの伝統文化において重要な位置を占める男性専用の集会所「バイ」の中でも、現在までその姿を留めているものとしては最古の部類に属する建物が存在します。しかし、パラオの気候は非常に多湿で年間を通して降水量が多く、木材などを主たる建築資材とする伝統的な建造物の長期保存を著しく困難にしています。そのため、たとえ最古とされるバイであっても、その起源は約200年前にまでしか遡ることが難しいのが現状です。これは、古代から連綿と続くパラオの社会構造や建築様式を示す貴重な手がかりである一方、気候が文化遺産の保存に与える影響の大きさを物語っています。

交通インフラ

アイライ州は、パラオの交通網において極めて戦略的な位置を占めています。州内にあるロマン・トメトゥチェル国際空港は、パラオへの空の玄関口として機能しており、国際的な往来に不可欠です。この空港の存在は、パラオの観光産業や国際交流にとって生命線と言えます。また、州とコロール島を結ぶ「日本・パラオ友好の橋」は、政治、経済、人口が集中するコロール島と、国土面積の大部分を占めるバベルダオブ島を結ぶ唯一の陸上交通路であり、人々の移動や物流を支える大動脈です。この橋の開通は、バベルダオブ島の開発を促進し、アイライ州を両島の結節点としてさらに重要な存在にしました。

教育環境

アイライ州の公教育は、パラオ共和国教育省の管轄下にあります。州内にはアイライ小学校があり、その歴史は1945年9月に遡ります。設立当初、校舎として旧日本軍の通信棟が利用されたという、第二次世界大戦後のパラオの復興期における一端を示すエピソードを持っています。中学校課程修了後の進路については、パラオ国内に唯一の公立高等学校であるパラオ高校が比較的近くに位置しているため、アイライ州から多くの生徒がこの高校へ通学しています。

対外交流

アイライ州は、国際的な友好交流にも積極的です。中華民国（台湾）の新竹市とは姉妹自治体提携を結んでおり、文化交流や人材育成などを通じて相互理解と友好関係を深めています。このような国際交流は、地域社会に新たな視点をもたらし、グローバルな視野を広げる機会となっています。

これらの要素、すなわち交通の要衝としての機能、隣接する首都へのアクセス、歴史的な文化遺産、そして地域に根差した教育体制や国際交流などが複合的に、アイライ州をパラオ共和国における独特で重要な地域として特徴づけています。

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