アイル・ゲット・ユー

アイル・ゲット・ユー：ビートルズ初期を彩る隠れた名曲

ビートルズの楽曲「アイル・ゲット・ユー」(I'll Get You)は、1963年8月発売のシングル『シー・ラヴズ・ユー』のB面曲として世に送り出されました。レノン＝マッカートニーの共作で、当初は「Get you in the end」というタイトルで制作されていたそうです。A面曲と同じく、特徴的な「yeah」の繰り返しは、この曲にも聴くことができます。

制作秘話と楽曲構成

ポール・マッカートニーは、ジョン・レノンとの共作であると明言しています。一方、レノンは1980年の『プレイボーイ』誌のインタビューで、共作ではあったものの、制作過程では困難があったことを示唆しています。この楽曲はDメジャー、4分の4拍子で構成され、レノンとマッカートニーのデュエットが中心となっています。ベースラインが強調されている一方、リズムギターとドラムは安定した8ビートを刻み、リードギターは使用されていません。イントロには、「ラヴ・ミー・ドゥ」や「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」でも使用されたハンドクラップが用いられ、パーカッションとしての役割を果たしています。

歌詞は「Imagine I'm in love with you（想像してみて、僕が君に恋してるって）」という呼びかけから始まり、この表現方法は後の「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」やレノンのソロ曲「イマジン」にも繋がるものと言えるでしょう。興味深いことに、マッカートニーは「It's not like me to pretend（そんなふりをするなんて、僕らしくないけれど）」というフレーズのコード進行が、ジョーン・バエズの「私の悩み」から着想を得たことを後に明らかにしています。

レコーディングとリリース

レコーディングは1963年7月1日にEMIレコーディング・スタジオで行われ、ミキシングは同月4日に行われました。当時のレコーディングデータは詳細に残されておらず、テイク数やミキシングに使用されたテイクなどは不明です。また、モノラル・ミックス作成後にセッション・テープが破棄されていたため、「ラヴ・ミー・ドゥ」、「P.S.アイ・ラヴ・ユー」、「シー・ラヴズ・ユー」同様、ステレオ・ミックスは存在しません。

リリースはイギリスで1963年8月23日、アメリカでは1963年9月16日に行われました。アメリカではその後も複数のシングル盤のB面曲としてリリースされています。オリジナルアルバムへの収録は遅れ、アメリカでは『ザ・ビートルズ・セカンド・アルバム』、イギリスでは『レアリティーズ』で初収録となりました。日本では1964年4月5日にシングル『シー・ラヴズ・ユー』のB面としてリリースされ、その後1978年にコンピレーションアルバム『ザ・ビートルズ・ビート』に収録されました。1995年の『ザ・ビートルズ・アンソロジー1』には、1963年10月13日のロンドン・パラディウムでのライブ音源が収録されています。また、BBCラジオの番組『Saturday Club』で演奏された音源も2013年の『オン・エア〜ライヴ・アット・ザ・BBC Vol.2』に収録されています。

参加メンバーとカバーバージョン

ジョン・レノン：リード・ボーカル、アコースティック・ギター、ハーモニカ
ポール・マッカートニー：リード・ボーカル、ベース
ジョージ・ハリスン：ハーモニー・ボーカル、エレクトリック・ギター
リンゴ・スター：ドラム

「アイル・ゲット・ユー」は多くのアーティストによってカバーされています。R・スティーヴィー・ムーア、マイケル・カーペンター、スミザリーンズなどが代表的な例として挙げられ、ポール・マッカートニー自身も2005年の全米ツアーで演奏し、ライブ・ビデオ『ライヴ・イン・ザ・US 2005〜ザ・スペース・ウィズイン・アス〜』に収録されています。

まとめ

「アイル・ゲット・ユー」は、アルバム未収録ながらも、ビートルズの初期作品を代表する楽曲の一つです。そのシンプルな構成とキャッチーなメロディー、そしてレノンとマッカートニーのハーモニーは、多くのリスナーを魅了し続けています。彼らのソングライティングやレコーディング手法、そして初期ビートルズの音楽性を理解する上で、この曲は重要な一曲と言えるでしょう。

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