アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル：解説

2017年公開のアメリカ映画『アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル』は、1990年代に世界を揺るがしたフィギュアスケート選手、トーニャ・ハーディングの半生を描いた伝記映画です。監督はクレイグ・ギレスピー、主演はマーゴット・ロビーが務め、アカデミー賞助演女優賞を受賞したアリソン・ジャネイなど豪華キャストが脇を固めます。

幼少期から頭角を現す

4歳でスケートを始め、類まれな才能を発揮したトーニャ。しかし、彼女の周囲は決して恵まれたものではありませんでした。冷酷で粗暴な母親ラヴォナは、トーニャをアイスショーで成功させることに固執し、激しい言葉で彼女を追い詰めます。父は家庭を出て行き、トーニャは孤独な日々を過ごします。

10代半ば、トーニャはジェフ・ギルーリーと出会い、結婚します。しかし、ジェフとの関係もまた、暴力的なものでした。アメリカフィギュアスケート界の閉鎖的な雰囲気と、トーニャ自身の激しい性格も相まって、彼女の人生は波乱に満ちたものとなります。

トリプルアクセルとオリンピック

1991年、トーニャは全米選手権で、アメリカ女子選手として初めてトリプルアクセルを成功させ優勝を果たします。しかし、その後のオリンピックでは思うような結果を残せず、その後もジェフとの関係は悪化の一途を辿ります。

リレハンメルオリンピック出場を目指し、再びトレーニングに励むトーニャ。しかし、その過程で起こったのが、ライバルのナンシー・ケリガン襲撃事件です。ジェフとその友人の関与が発覚し、トーニャ自身も事件に巻き込まれていきます。

襲撃事件とその後

事件後、トーニャは世間からのバッシング、裁判、そしてスケート界からの追放を経験します。彼女の人生は、まさに「史上最大のスキャンダル」と呼ばれるにふさわしい波乱の連続でした。しかし、彼女はそれでも生き続け、プロボクサーとして再起を図ろうとする姿が描かれ、映画は幕を閉じます。

映画の評価

本作は、トーニャの人生を単なるスキャンダルの当事者としてではなく、母親や夫からの虐待に苦しみながらも、自身の才能と葛藤する複雑な人物として描いています。マーゴット・ロビーの熱演、そしてアリソン・ジャネイの圧倒的な存在感も相まって、作品全体にリアリティと深みを与えています。

一方で、映画の内容については、事実と異なる点や、トーニャへの同情的な視点が強いという批判もあります。特に、ケリガン襲撃事件への関与について、映画はトーニャの責任を曖昧にしているという意見も見られます。

しかし、この映画は、単なる事実の再現ではなく、一人の女性の人生を通して、社会やメディア、そして人間の複雑さを描いた作品と言えるでしょう。観客は、トーニャの人生に共感したり、批判したり、様々な感情を抱きながら、この映画を鑑賞することになるはずです。

キャストと製作

マーゴット・ロビーによるトーニャ・ハーディング役の熱演は高く評価され、アカデミー賞にもノミネートされました。アリソン・ジャネイは、冷酷な母親ラヴォナ役を見事に演じきり、アカデミー賞助演女優賞を受賞しています。その他、セバスチャン・スタン、ジュリアンヌ・ニコルソンら実力派俳優が脇を固め、作品にリアリティを与えています。

製作にあたっては、マーゴット・ロビーが4ヶ月間、本格的なスケートトレーニングを行い、演技に臨みました。その努力の甲斐あって、映画におけるスケートシーンは、高い完成度を誇ります。

興行収入と評価

本作は、全米公開後、興行収入で成功を収め、批評家からも高い評価を得ています。Rotten Tomatoesでは90%の高い支持率を記録し、Metacriticでも高い評価を得ています。

しかし、一方で、実際の事件関係者からの批判的な声も上がっています。ナンシー・ケリガンは映画を鑑賞しておらず、コメントを控えているとのこと。ラヴォナ・ゴールデンも、映画の内容に反論するコメントを発表しています。

それでも、『アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル』は、一人の女性の複雑な人生を描き、観客に様々な感情と考えるきっかけを与えてくれる、傑作映画であると言えるでしょう。

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