トーニャ・ハーディング

トーニャ・マキシン・ハーディング（Tonya Maxene Harding）は、1970年11月12日アメリカ合衆国オレゴン州ポートランド生まれの元フィギュアスケート選手です。1992年アルベールビルオリンピック、1994年リレハンメルオリンピックのアメリカ代表として女子シングルに出場しました。1991年の世界フィギュアスケート選手権では2位に入賞し、同年に女子選手として史上2人目となるトリプルアクセルを成功させました。しかし、リレハンメルオリンピック直前に発生した「ナンシー・ケリガン襲撃事件」に関与したことで、その後の人生は大きな波乱に見舞われます。

経歴

幼少期からスケートを始めたハーディングは、12歳でトリプルルッツを成功させるなど、早い段階からその才能を発揮しました。当初はコンパルソリーが苦手でなかなか成績が伸び悩む時期もありましたが、1989-1990シーズンを最後にコンパルソリーが廃止されたことで、その高いジャンプ能力がより際立つようになりました。

女子選手史上2人目のトリプルアクセル成功

1991年の全米選手権でトリプルアクセルを成功させ初優勝を果たし、世界選手権への切符を手にしました。このトリプルアクセルは、当時女子選手として伊藤みどりに次ぐ史上2人目の快挙でした。初出場となった1991年の世界選手権では、クリスティー・ヤマグチに次ぐ2位となり、3位にはナンシー・ケリガンが入り、アメリカ女子選手が表彰台を独占しました。

1991-1992シーズンには、スケートアメリカのショートプログラムとフリースケーティングの両方でトリプルアクセルを成功させ優勝を果たします。続く1992年の全米選手権では、かかとの怪我を抱えながらも3位となり、アルベールビルオリンピックへの出場権を獲得しました。しかし、アルベールビルオリンピック本番では、前年まで成功させていたトリプルアクセルを、オリジナルプログラム、フリー演技ともに着氷に失敗し、総合4位入賞に留まりました。

1992-1993シーズンは不調に陥り、全米選手権では4位となり、世界選手権への出場権を逃しました。

ナンシー・ケリガン襲撃事件

1994年1月6日、リレハンメルオリンピックの選考会となる全米選手権の会場で、練習を終えたナンシー・ケリガンが何者かに襲撃される事件が発生します。いわゆる「ナンシー・ケリガン襲撃事件」です。ケリガンは膝を殴打され怪我を負い全米選手権を欠場、ハーディングはこの大会で優勝しました。

事件発生から2週間後、ハーディングの元夫であるジェフ・ギルーリーらが逮捕され、ハーディングにも疑惑の目が向けられます。2月1日には、元夫がハーディングに不利な証拠とともに司法取引を受け入れました。全米スケート協会とアメリカオリンピック委員会はハーディングをオリンピックチームから追放しようとしましたが、彼女は法的措置をほのめかしてそのまま留まりました。

リレハンメルオリンピック

リレハンメルオリンピック本番では、テクニカルプログラムのコンビネーションジャンプでトリプルルッツが両足着氷となるミスを犯し、10位と出遅れます。その2日後のフリーでは、演技直前の6分間練習の後に靴に問題が発生しました。自身の出番になってもリンクに現れず、バックステージで靴紐を調整している姿が放送されました。失格寸前の1分50秒過ぎにようやく登場したものの、フリー演技の最初のジャンプで失敗し、演技を中断、靴紐の不具合を訴えました。ジャッジは演技のやり直しを認め、再度リンクに戻りましたが、トリプルアクセルはシングルアクセルに終わり、最終順位は8位入賞に留まりました。

リレハンメルオリンピック後

リレハンメルオリンピック後、ハーディングは罪を認めることで懲役刑を免れ、3年間の執行猶予、500時間の奉仕活動、罰金16万ドルを受け入れました。全米スケート協会は、1994年全米選手権での優勝を取り消し、1999年までの公式大会出場権やコーチ資格を剥奪しました。プロのイベントへの参加は制限されませんでしたが、ハーディングを起用しようとするプロモーターは現れませんでした。

その後、プロボクシングに転身し、またオートレースにも挑戦しています。2017年には、自身の人生を描いた伝記映画『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』が公開され、再び注目を集めました。現在（2018年時点）はワシントン州で再婚し、子供をもうけ、大工仕事などをして暮らしています。

技術

1990-91年シーズンには全米選手権と世界選手権、1991-92年シーズンにはスケートアメリカのショートプログラムとフリースケーティングの両方でトリプルアクセルを成功させています。これらの成功は、公式大会におけるショートプログラムでのトリプルアクセル、トリプルアクセルからのジャンプコンビネーション、1競技会のショート・フリー両方での成功において世界初でした。また、トリプルアクセルの成功により、1991年の全米選手権では女子史上初の技術点6.0をマークしました。

主な戦績

^† 1993-94の全米選手権優勝はのちにタイトル剥奪。

プロボクシング

2002年にはセレブリティ・ボクシングに出場し、ポーラ・ジョーンズに勝利しました。2003年にプロデビューを果たし、サマンサ・ブローニングに敗北。コメディ番組でのセレブリティ・ボクシングでは男性コメディアンのダグ・スタンホープに勝利しましたが、後にこの試合はヤラセであったと暴露されました。その後、試合を予定していたものの殺害予告によりキャンセルされたり、TKOで敗北を喫したりし、最終的に3勝3敗の戦績で現役を引退しました。

プロボクシング戦績：6戦3勝3敗

脚注

外部リンク

トーニャ・ハーディング.org
トーニャ・ハーディング - Olympedia（英語）
トーニャ・ハーディングの戦績 - BoxRec（英語）
トーニャ・ハーディング (@therealtonyaharding) - Instagram

もう一度検索