アウィトゥス

エパルキウス・アウィトゥス：没落の淵源

エパルキウス・アウィトゥス（385年頃 - 456/457年）は、西ローマ帝国末期の皇帝であり、その短い治世は帝国の衰退を象徴しています。ガリア系の貴族出身で、元老院議員や軍の要職を歴任しましたが、最終的には権力闘争に敗れ、悲劇的な最期を迎えました。

生涯

アウィトゥスは、ガリアのクレルモンで有力な貴族の家柄に生まれました。父は421年に執政官を務めたフラウィウス・ユリウス・アグリコラとされています。彼は法学などの学問を修め、若くして政界に進出しました。また、西ゴート族との関係も深く、テオドリック1世の宮廷に滞在し、後のテオドリック2世にラテン語を教えました。

軍人としても活躍し、アエティウス将軍の下でフン族やブルグント族との戦いに参加しました。439年にはガリア民政総督に就任し、西ゴート族との友好条約を更新するなど、外交手腕も発揮しました。

皇帝即位

455年、皇帝ウァレンティニアヌス3世が暗殺されると、ペトロニウス・マクシムスが帝位を簒奪しました。しかし、マクシムスもすぐに横死し、ローマはヴァンダル族の略奪に遭いました。この混乱の中、アウィトゥスは西ゴート王テオドリック2世の支援を受け、皇帝に即位しました。

治世と失脚

アウィトゥスは、帝国の安定を図るために様々な政策を打ち出しましたが、その権力基盤は脆弱でした。ローマ市民は、異邦人であるアウィトゥスを快く思わず、また、ヴァンダル族の侵攻や食糧不足にも苦しんでいました。さらに、アウィトゥスはガリア人を重用したため、ローマ人の反感を買い、軍隊内にも不満が募りました。

456年、将軍リキメルとマヨリアヌスが反旗を翻し、アウィトゥスは廃位されました。彼はプラケンティアの司教に任命されましたが、間もなく殺害されました。

死後

アウィトゥスの死後、西ローマ帝国はさらに混乱を深めました。リキメルが実権を握り、傀儡皇帝を擁立する状態が続きました。アウィトゥスの治世は、西ローマ帝国の衰退を加速させる一因となりました。

人物像

シドニウス・アポリナリスは、アウィトゥスを教養豊かで、外交手腕に長けた人物として描いています。しかし、軍事的な才能には欠けており、また、贅沢な生活を好んだため、ローマ市民の反感を買いました。彼の治世は、西ローマ帝国の末期における皇帝の苦悩と無力さを象徴しています。

アウィトゥスと先帝との関係

アウィトゥス帝は、先帝ペトロニウス・マクシムス帝とは直接の血縁関係はありませんが、義理の兄弟という縁戚関係にありました。具体的に言えば、マクシムス帝の最初の妻エパルキア・アウィタはアウィトゥス帝の妹にあたります。

さらに、マクシムス帝の後妻ウォルシアナとも血縁関係にあります。系譜をたどると、コンスタンティヌス朝、ウァレンティニアヌス朝、テオドシウス朝、ヴァンダル王国の王族、東ローマ帝国皇帝であるアナスタシウス1世とその一族、レオ朝、ユスティニアヌス王朝、ヘラクレイオス王朝、西ゴート王国、メロヴィング朝、カロリング朝などに繋がり、4世紀から9世紀にかけて地中海世界を支配した多くの皇族、貴族、王族に連なります。

アウィトゥスの生涯は、西ローマ帝国の衰退期における権力闘争と没落の縮図と言えるでしょう。

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