ペトロニウス・マクシムス

ペトロニウス・マクシムス：陰謀と略奪に翻弄された西ローマ皇帝

フラウィウス・ペトロニウス・マクシムス（396年頃 – 455年5月31日）は、西ローマ帝国の皇帝として、わずか2か月半の短い期間在位しました。裕福な元老院議員であり、卓越した貴族であった彼は、軍務長官アエティウスと皇帝ウァレンティニアヌス3世の暗殺に関与し、帝位を簒奪しました。しかし、彼の治世は長くは続かず、ヴァンダル族によるローマ略奪の際に殺害され、悲劇的な最期を遂げました。

生涯

出自と官歴

ペトロニウス・マクシムスは396年頃に生まれました。彼の出自は明らかではありませんが、名門アニキア家に属していたと考えられています。彼は後に皇帝となるオリブリオスと親戚関係にあり、彼の祖父母は裕福な貴族であり、371年に執政官を務めたセクストゥス・クラウディウス・ペトロニウス・プロブスとアニキア・ファルトニア・プロバでした。父はアニキウス・プロビヌスであり、364年にイリュリクム属州長官、366年にはガリア、そして368年から375年にはイタリアの民政総督を歴任し、395年には執政官に就任しました。

マクシムスは若くして官界入りし、411年頃に法務官に就任したのが最初の記録です。その後、415年には護民官付書記官、416年から419年の間には帝室財務長官を務めました。420年1月から421年9月には首都長官に就任し、聖ペテロ大聖堂の修復を行いました。439年以前にもう一度首都長官を務め、421年から439年の間に近衛軍団長官にも任命されました。433年には執政官に選ばれ、439年にはイタリア民政総督に就任、443年には二度目の執政官に選ばれました。445年には貴族に叙爵され、カエリウスの丘に公共広場を建設しました。彼は西ローマ帝国で最も名誉ある地位にありましたが、翌年にアエティウスが三度目の執政官に選ばれると、その地位も脅かされることになります。

ウァレンティニアヌス3世暗殺と帝位簒奪

マクシムスと有力者アエティウス将軍との不和は、西ローマ帝国に災厄をもたらすことになります。彼はウァレンティニアヌス3世を唆し、アエティウスを粛清させ、その結果、皇帝自らの手によってアエティウスが殺害されました。ヨハネスの年代記によれば、マクシムスは賭博で負けた際に指輪を担保として取られ、その指輪を使ってウァレンティニアヌス3世がマクシムスの妻ルキニアを宮廷に呼び出し、陵辱したとされています。復讐を誓ったマクシムスは、アエティウスが生きている限り復讐は不可能と考え、彼を排除することを決意しました。彼は宦官ヘラクリウスと共謀し、ウァレンティニアヌス3世にアエティウスが皇帝を暗殺しようとしていると吹き込み、アエティウスを殺害させました。アエティウスが殺害されると、マクシムスは軍務長官職に就くことを望みますが、皇帝に拒否されます。これに怒ったマクシムスは、ウァレンティニアヌス3世の暗殺を決意し、スキタイ族のオプティラとトラウスティラを共犯者に選びました。455年3月16日、ウァレンティニアヌス3世はオプティラらに暗殺され、マクシムスは帝位を簒奪しました。

治世と死

帝位についたマクシムスは、権力を固めるためにウァレンティニアヌス3世の未亡人リキニア・エウドクシアと結婚しました。しかし、エウドクシアは夫の暗殺にマクシムスが関与していると疑っており、彼を快く思っていませんでした。東ローマ宮廷は彼の即位を承認せず、マクシムスはアウィトゥスを軍務長官に任命してトゥールーズへ送り、西ゴート族の支援を得ようとしました。さらに、彼はウァレンティニアヌス3世の皇女エウドキアと自身の息子を結婚させようとしましたが、エウドキアはヴァンダル王ガイセリックとの結婚が取り決められており、絶望したエウドクシアがヴァンダル宮廷に助けを求めたことが、ヴァンダル族のイタリア侵攻の口実となりました。

マクシムスの即位から2か月後の5月、ガイセリックがイタリアに向けて出航したとの知らせがローマに届くと、市内はパニックに陥り、住民の多くが逃げ出しました。マクシムスは無為無策のまま逃亡を試みましたが、5月31日、街頭で激昂した群衆に捕まり、石を投げつけられて殺害されました。彼の遺体は切り刻まれ、テヴェレ川に投げ込まれました。彼の在位はわずか75日間でした。皇子パッラディウスも処刑されたと伝えられています。

マクシムスの死から2日後、ガイセリックはローマに入り、2週間にわたり略奪の限りを尽くしました。教皇レオ1世の懇願に応えて、放火、虐待、殺人は控えたものの、大量の略奪品に加え、皇后エウドクシアとその娘たちを連れ去りました。その後、アウィトゥスが西ゴート族の支援を得て皇帝を宣言し、西ローマ帝国は再び混乱の時代を迎えることになります。

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