レオ朝

レオ朝：東ローマ帝国の変革期を彩った異民族王朝

レオ朝は、東ローマ帝国（ビザンツ帝国）において、457年から518年まで約60年間続いた王朝です。この王朝は、レオ1世、その孫のレオ2世、レオ2世の父ゼノン、そしてゼノンの皇后アリアドネの再婚相手であるアナスタシウス1世の4人の皇帝によって統治されました。さらに、一時的に帝位を簒奪したバシリスクスや、西ローマ皇帝ユリウス・ネポスもこの王朝に関連付けられることがあります。レオ朝は、トラキア人やイサウリア人といった、当時蛮族とされていた異民族出身者が中心となっており、その異質な背景が、当時の帝国に大きな変化をもたらしました。

レオ1世：王朝の創始者

レオ1世は、トラキア出身の軍人であり、457年に先帝マルキアヌスの死去後、有力な将軍アスパルの支持を受けて皇帝に即位しました。彼は、コンスタンティノープル総主教によって戴冠された最初の皇帝です。即位当初はアスパルの傀儡に過ぎませんでしたが、イサウリア出身の武将タラシコデッサ（後のゼノン）を登用し、アスパル父子を打倒。皇帝としての地位を確固たるものにしました。また、西ローマ帝国への影響力拡大を図り、西ローマ皇帝の擁立にも関与しました。しかし、ヴァンダル族討伐の失敗や西ローマ帝国での混乱により、その努力は実を結びませんでした。レオ1世は474年に病死し、孫のレオ2世が後を継ぎました。

レオ2世：短い治世

レオ1世の死後、わずか7歳で即位したレオ2世は、父ゼノンが後見人となりました。しかし、即位からわずか数ヶ月後の474年11月に病死し、短い治世を終えました。

ゼノン：波乱に満ちた皇帝

レオ2世の死後、父ゼノンが単独皇帝となりました。しかし、その治世は波乱に満ちたものでした。475年には、皇后アリアドネの母ウェリナが扇動したとされる反乱により、レオ1世の義弟バシリスクスがコンスタンティノポリスに侵攻し、ゼノンは帝位を追われました。しかし、バシリスクスの治世は長くは続かず、翌476年にはゼノンが復位を果たしました。ゼノンの治世中には、西ローマ帝国が滅亡し、東ローマ帝国が名実ともにローマ帝国の単独の後継者となりました。ゼノンは、西ローマ皇帝ロムルス・アウグストゥルスを退位させたオドアケルにローマ貴族の地位を与えましたが、後にオドアケルと対立。テオドリック大王にオドアケル討伐を命じましたが、その実現を見ることなく491年に病死しました。

バシリスクス：簒奪者

ゼノンを追放して帝位を簒奪したバシリスクスは、レオ1世の時代にヴァンダル族討伐に失敗した将軍でした。人望も能力も乏しかった彼は、翌476年にはゼノンに帝位を奪還され、捕縛された後に処刑されました。

アナスタシウス1世：財政再建の立役者

ゼノンの死後、高齢の枢密院警護長アナスタシウスが皇帝に選出されました。ゼノンの皇后アリアドネと結婚していたため、レオ朝の一人として数えられます。アナスタシウス1世は、即位直後にイサウリア人を追放し、反乱を鎮圧しました。また、先帝ゼノンの浪費政策によって破綻寸前だった帝国財政を立て直すなど、有能な皇帝として知られています。しかし、単性論寄りであったため、カトリック教会と対立し、東西教会の分裂を招きました。518年に高齢で死去し、ユスティヌス1世が後を継ぎました。

レオ朝の終焉とその後

レオ朝による東ローマ帝国支配が終わった後も、レオ1世の娘ヘレナの子孫は存続し、ヘラクレイオス王朝とも縁戚関係を結びました。また、ユスティニアヌス王朝とも繋がりがあり、東ローマ帝国の歴史に大きな影響を与え続けました。

レオ朝は、異民族出身者が中心となった王朝であり、その特異な背景から、帝国に大きな変化をもたらしました。西ローマ帝国の滅亡や宗教対立、そして内部の権力闘争など、様々な問題を抱えながらも、東ローマ帝国の歴史において重要な役割を果たしました。

もう一度検索