アウグスト・レッシュ

アウグスト・レッシュの生涯と業績

アウグスト・レッシュ（August Lösch）は、1906年10月15日に南ドイツのエーリンゲンで生まれました。彼はハイデンハイム・アン・デア・ブレンツにて育ち、アビトゥーアを取得し、商業科の教育を受けることからスタートしました。その後、フライブルク大学、キール大学、ボン大学にて経済学を学び、1932年にボン大学で博士号を取得しました。

1934年から1935年、そして1936年から1937年までの間、レッシュはロックフェラー財団の支援を受けてアメリカに滞在しました。彼はこの経験を通じて、アメリカの経済学や社会情勢に触れ、独自の視点を養います。その後、ハイデンハイムとボンでの研究活動に従事し、1940年には代表作である『経済立地論（Die räumliche Ordnung der Wirtschaft）』を発表しました。この作品は、地域経済や国際貿易に関する深い洞察を提供し、彼を地域科学の先駆者としての地位に押し上げることとなります。

研究の一環として、レッシュはキール大学の世界経済研究所に研究員として採用されました。1941年には、その役割の1年後に研究グループのリーダーとしても活躍しました。この期間中、彼は再びアメリカに渡り、著名な経済学者エドワード・アルマンと意見交換を行いました。彼らの交流は、後に中心地理論をアメリカに紹介する道となりました。また、1944年10月には、研究所が爆撃を避けてラッツェブルクに移転するという厳しい状況も経験しました。

しかし、レッシュは、第二次世界大戦のドイツの敗北の後、猩紅熱のためラッツェブルクで亡くなりました。

レッシュの評価と影響

アウグスト・レッシュは、その独自の学術的能力を持ちながら、ナチス体制下で生き延びるためのニッチを見出していました。しかし、彼の自由な精神は、時に体制に抵抗するものでもありました。彼の手帳には、当時の世相への批判が色濃く残されており、「今や誰もが踊っている、愚か者の奏でる笛に合わせて」といった言葉や、「こんな暴力の空気の中では窒息してしまう、息がしたい。自由！」といった切実な思いが記されています。これらの言葉からも、彼の思想の自由さや人間性への強いこだわりがうかがえます。

レッシュの著作は、その内容において独自の視点を持っており、時にはナチスのイデオロギーと重なる部分もありましたが、彼自身の思想的背景は非常に特異なものでした。例えば、1932年に出版した『Was ist vom Geburtenrückgang zu halten?』は、第一次世界大戦後の人口出生率の低下について独自の解釈を示し、当時の人口経済学の見解を反映させています。その結果、彼の理論は彼の時代においても新たな議論を呼び起こしました。

レッシュの業績は、後世においても高く評価されており、1971年には「アウグスト・レッシュ賞」が設立されました。この賞は、優れた地域科学文献に対して与えられるもので、隔年の授与が行われていました。2004年には一旦中止となるものの、2006年には再び復活し、初回の受賞者はキール大学に授与されました。

彼の著作リストには、『経済立地論』の他にも、1936年の『Bevölkerungswellen und Wechsellagen』や、『Was ist vom Geburtenrückgang zu halten?』といった作品があり、経済学のさまざまな側面を探求しています。

アウグスト・レッシュの業績は、地域科学の発展において重要な役割を果たしており、現代においてもその影響力は感じられています。彼の考え方や理論は、今なお研究や学習の対象として重要な位置を占めており、経済学の歴史における重要な人物とされています。

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