ネウストリア

ネウストリア：フランク王国の西部を形成した地域

ネウストリアは、511年にフランク王国が分裂した際に誕生した地域であり、その名は「新しい（西の）土地」を意味します。現在のフランス北部、具体的にはアキテーヌ地方からイギリス海峡にいたる広大な範囲を指し、パリやソワソンといった主要都市を擁していました。この地域はフランク王国の西部を構成し、6世紀から8世紀にかけてはメロヴィング朝の支配下にありました。

メロヴィング朝時代のネウストリア

クローヴィス1世の死後、フランク王国の領土は息子たちによって分割され、ネウストリアはその一部として成立しました。セーヌ川とロワール川の間に位置するこの地域は、レグヌム・ネウストリアエ（ネウストリア王国）として知られるようになります。この時期、ネウストリアはしばしば東部の有力地域であるアウストラシアと対立し、200年以上にわたって領土の再分割や戦争が繰り返されました。

しかし、ネウストリアとアウストラシアは数回にわたり一時的な再統合を経験しています。最初に両地域を統合したのは、クロタール1世の時代（558年-562年）でした。その後、ネウストリアの王妃フレデグンドとアウストラシアの王妃ブリュンヒルダの間で激しい権力闘争が繰り広げられ、戦争が勃発しました。最終的に、クロタール2世がブリュンヒルダを破り、両地域を再び統合しましたが、この統合も長くは続きませんでした。

ダゴベルト1世の時代にも一時的な統合が実現しましたが、その後も内戦が続きました。宮宰の台頭により、ネウストリアの王家も次第に権力を失い、宮宰が実権を握るようになります。678年には、宮宰エブロインがアウストラシアを征服しましたが、彼は後に暗殺されました。687年、アウストラシアの宮宰ピピン2世がネウストリアを破り、今度はアウストラシア主導で両地域が統合されました。

カロリング朝時代のネウストリア

ピピン2世の子孫であるカロリング朝は、宮宰としてフランク王国を支配し続けました。751年、ピピン3世がメロヴィング朝を倒し、フランク王として即位すると、カロリング朝が実権を掌握しました。ネウストリア、アウストラシア、ブルグントは、一つの支配者のもとで統合されるようになり、次第にネウストリアという名称は使われなくなっていきました。

748年、ピピン3世は弟のグリフォにネウストリアの一部を与え、メーヌ公領が成立しました。9世紀には、セーヌ川とロワール川の間を指す地域としてネウストリアという名称が使用されることがあり、カール大帝は長子のカールにこの地域を与えました。カロリング朝のもとでは、ネウストリア王はブルトン人に対してフランク王国の宗主権を守る義務を負っていました。

817年、ルイ1世はネウストリアを長子のロタール1世に与えましたが、ロタールが反乱を起こすと、次男のペパン1世、そしてシャルル2世へと与えられました。アキテーヌと共にネウストリアは、シャルルの西フランク王国の主要な部分を形成し、843年のヴェルダン条約により皇帝から独立しました。シャルル2世は長子にル・マンのネウストリア支配権を与える伝統を続け、ルイ2世をネウストリア王に任命しました。ルイ2世は、ブルターニュ王エリスポエの娘と結婚し、ブルトン人王朝からレグヌムを授けられました。

ネウストリア辺境侯

カロリング朝のシャルル禿頭王は、861年にネウストリアの辺境侯を設置しました。当初は、ブルトン人とノース人に対する2つの辺境侯がありましたが、後に統合されました。911年、ロベール1世が両辺境侯位を得て、その系統であるカペー家が987年までネウストリア全土を治めました。カペー家がフランス王位につくと、ネウストリアの辺境侯は任命されなくなり、ネウストリアはヨーロッパの政治用語として消滅しました。

ネウストリアの支配者

メロヴィング朝の王

クロタール2世 (584年–629年)
ダゴベルト1世 (629年–639年)
クローヴィス2世 (639年–657年)
クロタール3世 (657年–673年)
テウデリク3世 (673年)
キルデリク2世 (673年–675年)
テウデリク3世 (675年–691年)
クローヴィス4世 (691年–695年)
キルデベルト3世 (695年–711年)
ダゴベルト3世 (711年–715年)
キルペリク2世 (715年–721年)
テウデリク4世 (721年–737年)
キルデリク3世 (743年–751年)

宮宰

ランドリック (613年まで)
グンドランド (613年–639年)
アエガ (639年–641年)
エルキノアルド (641年–658年)
エブロイン (658年–673年)
ウルフォアルド (673年–675年)
レウデシウス (675年)
エブロイン (675年–680年) (再)
ワラトー (680年–682年)
ギステマー (682年)
ワラトー (682年–686年) (再)
ベルカリウス (686年–688年)
ピピン2世、ノルデベルト (688年–695年)
グリモアルド2世 (695年–714年)
テウドアルド (714年–715年)
ラガンフリド (715年–718年)
カール・マルテル (718年–741年)
ピピン3世 (741年–751年)

カロリング朝の準王

カール (790年–811年)
ロタール1世 (817年–831年)
ピピン1世 (831年–838年)
シャルル2世 (838年–856年)
ルイ2世 (856年–879年)

カペー朝の辺境侯

ロベール1世 (911年–922年)
ユーグ大公 (922年–956年)
ユーグ・カペー (956年–987年)

史料

ネウストリア側の視点から書かれた主要な同時代史料として、『リベル・イストリアエ・フランコルム』が挙げられます。

その他

2015年公開の日本映画『HERO』には、架空の国家として「ネウストリア公国」が登場します。

脚注

[Charles Oman. The Dark Ages 476–918. Rivingtons: London, 1914.]
* [Thomas Hodgkin . Italy and her Invaders. Clarendon Press: 1895.]

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