フレデグンド

フレデグンド：陰謀と権力のメロヴィング朝妃

フレデグンド（540年頃?/549年頃? - 597年12月8日）は、メロヴィング朝ソワソン王キルペリク1世の妃として、その生涯を陰謀と権力に彩りました。彼女は、元々はキルペリクの最初の妻アウドヴェラの召使いでしたが、その美貌と策略によって王の寵愛を勝ち取り、王妃の地位へと上り詰めました。

フレデグンドは、アウドヴェラを王妃の座から引きずり下ろすために策略を巡らせます。彼女はアウドヴェラを修道院へ送り込み、キルペリクが新たな結婚を模索するように仕向けました。キルペリクは、異母兄シギベルト1世の結婚を羨み、フレデグンドを含む妾たちを遠ざけ、西ゴート族の王女ガルスヴィントと結婚します。しかし、ガルスヴィントは結婚後まもなく、フレデグンドによって絞殺されたと考えられています。この事件は、ガルスヴィントの妹ブルンヒルドとの間に、40年以上にわたる報復の連鎖を生み出すこととなりました。

フレデグンドは、アウストラシアのシギベルト1世暗殺、シギベルトの息子キルデベルト2世、ブルグント王グントラム、そしてブルンヒルドの暗殺を指示したとも伝えられています。彼女は、継子が夫の後を継いで王位に就くことを恐れ、彼らを排除しようと画策しました。かつて王妃であったアウドヴェラを暗殺し、彼女とキルペリクの間に生まれた王子メロヴィグとクロヴィスを奸計によって死に追いやりました。

584年にキルペリクが不可解な状況で暗殺されると、フレデグンドは夫の財産を抱えてパリの大聖堂へ逃げ込みます。グントラムは、彼女と生き残った息子クロタール2世を、592年に自身が死去するまで保護しました。

トゥールのグレゴリウスは、フレデグンドを冷酷で残忍な人物として描き、その恐ろしさは比類がないと評しています。フレデグンドの死後、彼女の息子クロタール2世は、ブルンヒルドを捕え、3日間にわたる拷問の末、四頭の馬に引き裂かせるという残虐な方法で処刑しました。この処刑には、フレデグンドのブルンヒルドに対する憎悪が色濃く反映されていたと言えるでしょう。

597年12月8日、フレデグンドはパリで死去しました。彼女の墓は、大理石と銅のモザイクで作られ、サン＝ドニ大聖堂に安置されています。

フレデグンドは、シンデレラの原型となった物語の一つとしても知られています。民俗学者アラン・ダンダスは、トゥールのグレゴリウスの『フランク史』を引用し、フレデグンドが娘リグントに対して嫉妬心を抱き、宝物庫で殺害しようとしたエピソードを紹介しています。

リグントが西ゴート王族のもとへ嫁ぐ際、多くの贈り物が用意されましたが、フレデグンドはそれらが全て夫の蓄えから出されたものだと主張しました。しかし、長い旅の途中でリグントの召使いたちは略奪を繰り返し、彼女を見捨ててしまいます。584年にキルペリクが亡くなると、アキテーヌのデシデリウスは残された宝を確保するためにトゥールーズへ向かいました。

フレデグンドは、その生涯を通じて、陰謀、策略、そして権力への執着を体現した人物でした。彼女の存在は、メロヴィング朝の歴史に深く刻まれ、後世に語り継がれています。

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