アウディ・クワトロ

アウディ クワトロ

アウディが1980年から1991年にかけて製造したクワトロは、革新的な四輪駆動技術を搭載したクーペ型乗用車です。最初のモデルはポルシェ出身の技術担当責任者、フェルディナント・ピエヒの指揮のもとに設計され、1980年3月のジュネーヴ・モーターショーで初披露されました。車名の「クワトロ」は本来、このモデルを指しますが、徐々にアウディの四輪駆動システム全般を示すようになりました。日本では「ビッグクワトロ」として知られることもあります。

このクワトロは、悪路だけでなくさまざまな路面においてもハイパワーを確実に伝えることを目的に、センターデフを内蔵したフルタイム式の4WDシステムを採用しています。これにより、クワトロは高性能4WDスポーツカーの先駆けとなり、自動車業界に革新をもたらしました。

車両仕様と市販モデル

クワトロは、アウディ・80（B2）のフロアパンを流用して設計されていますが、フロントサスペンションは異なる200（C2）用が採用されています。リアサスペンションは、クーペ仕様のトーションビーム式からストラット式に変更され、このセッティングにより操縦安定性が向上しました。ブレーキには前輪と後輪にディスクブレーキが装備され、スポーティな運動性能を実現しています。

1980年11月に発売されたクワトロは、初期モデルでは2,144ccの直列5気筒エンジンを搭載し、ターボチャージャー付きで最高出力200PSを誇ります。1983年には外装のマイナーチェンジが行われ、ヘッドライトのデザインやテールライトの変更が施されました。さらに、1987年には排気量が2,224ccに拡大され、より良好なトルク特性を実現しました。

WRCでの活躍

クワトロは、世界ラリー選手権（WRC）においても傑出した実績を残しています。1980年にアウディ・スポーツが設立され、1981年からは5気筒ターボエンジンを搭載したクワトロが参戦。初戦のモンテカルロ・ラリーでは圧倒的な速さを華々しく示しました。1982年にはメイクスタイトルを獲得し、1983年にはグループB規定のもとにクワトロA1が投入され、さらなる成功を収めました。クワトロは史上初の四輪駆動車としてタイトルを獲得し、その技術は後のラリーカーに大きな影響を与えました。

スポーツクワトロとその進化

WRCでの優位を確保するため、1983年に登場したスポーツクワトロは、性能を大幅に向上させるために多くの改良が施されました。軽量化と高出力を実現したこのモデルは、1985年にはさらなる進化を遂げ、600馬力を超える出力を発揮するようになりました。これにより、ラリーやヒルクライムイベントにおいても強い存在感を示しました。その結果、1985年のパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムでは新記録が達成されました。

製造とその後の影響

クワトロは1991年に製造が終了されるまで、合計で11,452台が生産されました。アウディがもたらしたこのモデルは、自動車産業における四輪駆動のスタンダードを確立し、多くのスポーツカーやラリーカーに影響を与える要素となりました。正規販売や輸出も行われた他、その技術は今もなお、多くの現代車両に反映されています。今日でも「クワトロ」は性能と信頼性の象徴として親しまれています。

もう一度検索