直列5気筒

直列5気筒エンジンの概要と歴史

直列5気筒（ちょくれつごきとう）エンジンは、エンジン技術の一つで、5つのシリンダーが直列に配置されている構造を持っています。このエンジン形式は、直列4気筒と直列6気筒の中間的な特性を持ち、独特のバランスや出力特性を提供します。一般には「直5」と略されることもあります。

技術的な背景

直列5気筒エンジンは、かつてキャブレター技術が主流だった時代には、その設計や燃焼特性が難しいという課題を抱えていました。しかし、燃料噴射技術の発展により、1976年にアウディの100モデルで初めて商業用に採用されました。この技術革新がきっかけで、以降多くのメーカーがこのエンジン形式を採用するようになりました。

例えば、メルセデス・ベンツやフォード、GM（ハマー）など様々な企業が直列5気筒エンジンを用いており、トック・バス用エンジンとしても派生しています。特にフォルクスワーゲンは、直列5気筒を基にしたV10エンジンを開発した事例もあります。

配置と用途

その特性上、直列5気筒エンジンは一般的に縦置きで配置されることが多いのですが、ボルボ・カーズは横置きの配置を採用したモデルもあります。アウディ自身も、2012年に発売した前輪駆動クーペのアウディ・TTでは、新たに横置きの直列5気筒ターボエンジンを使用しています。

しかしながら、時代の進展とともに、和製品は4気筒または6気筒エンジンに統合される傾向が強まり、2010年前後には多くのメーカーが直列5気筒エンジンの生産を終了しました。現在、このエンジン形式を用いる市販乗用車はアウディなど一部のメーカーに限られています。

現行および生産終了の車種

現在、直列5気筒エンジンを搭載している現行車種としては、アウディのTT RS、RS3スポーツバック、RS3セダン、RS Q3などがあります。一方で、生産が終了した車種としては、ホンダのインスパイア、ビガー、アキュラ・TL、フィアットのクーペフィアット、トヨタのランドクルーザー70系などが挙げられます。また、業務用大型車両にも直列5気筒エンジンが用いられるケースが見受けられ、日野やUDトラックスなどが製造したトラックやバスに搭載されています。

レースでの活用

1960年代、ホンダは2輪のRC148/RC149モデルで5気筒エンジンを使用しており、このエンジンは当時の標準的な形式とは異なり、6気筒エンジンを基にしたものでした。ホンダは後にV型5気筒エンジンも開発し、レースで一定の成功を収めています。また、フォルクスワーゲンはダカール・ラリーにおいて直列5気筒のディーゼルターボエンジンを搭載し、3連覇を達成する功績を挙げました。

結論

直列5気筒エンジンは、独自の特性を持ちながら、時代の流れに伴い多くの車両で姿を消しつつあるものの、今でも一部のモデルには採用され続けています。その特異な配置と特性は、自動車技術の多様性を示す一例と言えるでしょう。

もう一度検索