アウディ・100

アウディ100：アウディの歴史を彩る名車

アウディ100は、ドイツの自動車メーカー、アウディが1968年から1994年まで製造していた高級セダンです。4世代にわたるモデルチェンジを経て、常に時代の先端をゆく技術と洗練されたデザインで高い人気を誇り、アウディの歴史において重要な役割を果たしました。本稿では、各世代の特徴やモデルバリエーション、日本における販売状況などを詳しく見ていきます。

初代（C1系：1968-1976年）

1968年、アウディ・フォルクスワーゲングループのフラグシップモデルとしてデビュー。当時としては大型のセダンボディに、1.8L直列4気筒エンジンを搭載し、前輪駆動方式を採用しました。馬力は、エンジンチューニングにより80馬力、90馬力、100馬力の3種類が用意されました。ボディスタイルは当初4ドアセダンのみでしたが、1969年には2ドアセダン、1970年には1.9L 115馬力エンジンを搭載した2ドアクーペ「100クーペS」が追加されました。1970年にはセダンの最上級グレードにVW製3速ATが設定され、1972年にはエンジンを85馬力に統一、最上級グレードにはクーペと同じ1.9Lエンジンが搭載されました。1973年のマイナーチェンジを経て、1975年にはアウディ80にも搭載される1.6Lエンジンが追加されました。

2代目（C2系：1976-1982年）

1976年、フルモデルチェンジを実施。世界初の量産車搭載となる直列5気筒ガソリンエンジン（2.1L、100馬力）を採用したことが大きなトピックでした。このエンジンは「6気筒のパワーと4気筒の経済性」を謳い文句に、後に改良され136馬力までパワーアップしています。ボディバリエーションは4ドア、2ドアセダンに加え、5ドアハッチバックの「アヴァント」が新たに追加されました。このアヴァントは、現在のステーションワゴンとは異なり、ファストバックスタイルのハッチバックでした。

このC2シリーズは、新設計のエンジンと改良されたシャシーによりドライバビリティが向上し、メルセデス・ベンツのコンパクトモデルに匹敵する高い評価を得ました。FFレイアウトを活かした広い室内空間、静粛性、そしてネガティブスクラブサスペンションや2系統ブレーキ配管など、安全面にも配慮した設計が特徴でした。1980年には、2.2Lターボエンジン（170馬力）を搭載した上級モデル「200」が追加されました。北米市場では「5000」として販売され、アウディのブランドイメージ向上に大きく貢献しました。日本市場には、GL5E（最上級グレード）、L5E（GLの廉価版）、CD5E（上級仕様）などが正規輸入されました。ディーゼルモデル（100 L5D）も販売されましたが、MTのみの設定と、ユーザー層の嗜好とが合致しなかったことから販売は低迷しました。

3代目（C3系：1982-1992年）

1982年のフルモデルチェンジでは、空力性能の向上に重点が置かれ、Cd値0.30という当時としては驚異的な数値を達成しました。ボディは2ドアセダンが廃止され、4ドアセダンとアヴァントの2種類がラインナップされました。マイナーチェンジでは、衝突時にステアリングホイールを前方に動かす衝撃吸収システム「プロコン・テン」が導入されました。このC3は、空力性能の高さと革新的な安全技術により、1983年度のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。日本でもモーターマガジン主催のワールド・カー・オブ・ザ・イヤー賞を受賞しています。

アウディはラリー競技での成功を活かし、100/200にも4WDシステム「クワトロ」を搭載したモデルを追加しました。また、上級モデルとしてV8エンジンを搭載した「V8」も登場しました。しかし、北米で販売されていた「5000」は、番組で取り上げられたブレーキとアクセルの踏み間違い事故が原因でネガティブなイメージが定着し、1988年モデルを最後に名称が変更されました。日本市場には、100CD、100CC、100アヴァントなど、多様なモデルが導入されました。200シリーズも一部導入されましたが、アヴァントは輸入されませんでした。

4代目（C4系：1990-1994年）

1990年、4代目モデルが登場。大型化を避け、室内空間を拡大したパッケージングが特徴です。主力エンジンは直列5気筒でしたが、ターボエンジンは廃止され、代わりにV型6気筒エンジンが新設されました。上級モデルの200は廃止され、代わりに高性能モデル「S4」が登場しました。1995年のマイナーチェンジで車名がA6に変更され、アウディ100の歴史に幕を閉じました。日本市場には、1991年からヤナセが輸入を始めましたが、1992年に販売方法を巡る問題で決裂、ファーレン店とDUO店で販売されるようになりました。ラインナップは100 2.3E、100 2.8E、100 2.8Eクワトロ、100 2.8Eアヴァント、S4などが含まれていました。

アウディ100は、時代の変化に対応しながら、常に技術革新と洗練されたデザインを追求し続けた、アウディを代表する名車でした。その技術的な革新と高い完成度は、後のアウディモデルにも大きな影響を与え続けています。

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