アウトサイダー (短編)

古城の孤独と、衝撃の真実：H・P・ラヴクラフト『アウトサイダー』

H・P・ラヴクラフトの代表作の一つとして名高い『アウトサイダー』(The Outsider)は、1926年に発表された短編小説です。古びた城に幽閉された主人公の視点から語られる物語は、読者に強い孤独感と不安を呼び起こします。

物語は、主人公が自身の生い立ちについて語る場面から始まります。彼は薄暗く、古びた城で物心ついたときから孤独な生活を送っていました。背の高い木々に囲まれた城は、常に影に閉ざされており、唯一高い塔がそびえ立っていますが、老朽化が進み登ることは困難です。

主人公の記憶は曖昧で、幼少期に高齢の男性に育てられたらしいこと以外、ほとんど何も覚えていません。人との交流はなく、城内の膨大な書物から知識を得てきました。鏡を見たこともなく、自分の姿を知りません。

彼はしばしば城の外へ出ようと考えます。しかし、森の暗闇と恐怖に阻まれ、いつも城へ引き返します。ある日、主人公は塔に登り、太陽の光を浴びたいと決意します。崩れかけた塔をよじ登り、ついに天井にたどり着きます。そこには、棺桶のような奇妙な箱が置かれた部屋があり、更に上の階へ続く扉がありました。

扉の先は、月明かりが差し込む石造りの階段でした。期待に胸を膨らませ、階段を登った主人公ですが、月が雲に隠れると再び暗闇に包まれます。手探りで階段を登りつめると、鉄格子の扉を発見します。転落の危険を考慮し、月が出るのを待つことにします。

やがて月明かりが戻り、扉を開けた主人公が目にした光景は、想像をはるかに超えるものでした。天空の景色を期待していた彼を待っていたのは、教会の中庭のような場所、そして地下の小部屋への入り口でした。

小部屋から外に出ると、見覚えのある城が目の前にありました。しかし、その城は窓から光が溢れ、人々が楽しそうに過ごしています。城の中に入ると、人々は悲鳴を上げ、逃げ惑います。そして、隣の部屋から不気味な怪物が現れます。怪物はぼろぼろの服を着て、顔は腐敗し、かつて人間だったとしか思えない姿をしています。

主人公は怪物の姿に驚き、手を伸ばして触れてしまいます。そして、教会の中庭に戻り、小部屋へ戻ります。そこで、自分が「アウトサイダー」、つまり招かれざるものだと悟ります。実は、触れたのは怪物の手ではなく、冷たいガラスの表面だったのです。

この物語は、様々な解釈が可能です。シンプルに解釈すれば、死後蘇った主人公が、自分の姿を見て墓に戻る物語と言えるでしょう。しかし、主人公の圧倒的な孤独感や、ラヴクラフト自身の内面を反映した自伝的な要素も指摘されています。ラヴクラフト自身、「自分は常にアウトサイダーである」と語っていたと言われています。

作品には、クトゥルフ神話の要素（ネフレン＝カ、ニトクリスへの言及）も含まれており、エドガー・アラン・ポー作品からの影響も指摘されています。また、ラヴクラフトの死後、アーカムハウスから刊行された作品集『アウトサイダーその他』の表題作となり、オーガスト・ダーレスのクトゥルフ神話作品においては、ラヴクラフトの著書がアイテムとして登場するなど、様々な形で後世に影響を与え続けています。

『アウトサイダー』は、その不気味で詩的な描写、そして解釈の幅の広さから、読者に強い印象を残す、ラヴクラフトを代表する傑作の一つと言えるでしょう。 物語が持つ孤独感と、衝撃的な結末は、読者に深い余韻を残します。

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