アオリスト

アオリスト（Aorist）

アオリスト（英: Aorist）は、文法におけるアスペクト（相）の一種であり、古代ギリシア語の「ἀόριστος (aóristos)」（境界のない、範囲が不確定の）という言葉に由来します。狭義には、ギリシア語をはじめとするインド・ヨーロッパ語族の時制の一つを指します。

概要

アオリスト相は、動作が継続的であったり反復されることを表す未完了相や、動作が生じさせた結果に注意を向けさせる完了相とは対照的に、動作が単純で列挙的、瞬間的であることを示します。

直説法においては、アオリストは過去の動作について総括的に、また完結した出来事として述べます。また、現在の普遍的な陳述を表すためにも使われることがあります（格言的アオリスト）。この場合は、時制としてではなく「相としてのアオリスト」ということができます。直説法以外の他の法（接続法、希求法、命令法、不定法、さらに分詞）では、アオリストは単にアスペクトの面を表しています。直説法以外では時間の意味は消え、他のアスペクトと純粋に相補的な働きをします。

アスペクトとしての例は、「マタイによる福音書」6:11の主の祈りに使われています。「今日われわれにパンを与えてください」（δὸς （dòs）、「与える」の命令法アオリスト）。これとは対照的にルカ伝 11：3では、「与えてください」は命令法現在のδίδου （dídou）が使われています。この命令法現在は現在形の持つ未完了の動作というアスペクト面、すなわち動作の継続という意味で「日々われわれにパンを与えてください」ということを示しています。

インド・ヨーロッパ祖語では本来アオリストは動詞の活用パラダイム上のアスペクトのひとつとして発生しましたが、後にはサンスクリットに見られるようなテンスとアスペクトが組み合わされたものに発展しました。多くのインド・ヨーロッパ語は独立した区分としてのアオリストを失いました。例えばラテン語ではアオリストは完了形と同化しました。

形態論

ギリシア語やサンスクリットではアオリストを表示する形態上の特徴がいくつかあります。

関連項目

相 (言語学)
時制
未完了過去
完了
完結相

外部リンク

Greek tenses （英語）

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