アクイレイアの遺跡地域と総大司教座聖堂のバシリカ

アクイレイアの遺跡地域と総大司教座聖堂のバシリカ

アクイレイアの遺跡地域と総大司教座聖堂のバシリカは、イタリア北東部にあるユネスコの世界遺産（文化遺産）です。この遺産は、古代ローマ時代の遺跡と中世にこの地域のキリスト教社会の中心であった大聖堂（バシリカ）から構成されています。

アクイレイアの遺跡地域

アクイレイアの町は、紀元前181年に古代ローマの植民都市として建設されました。当時はアドリア海が現在よりも内陸に入り込んでおり、この都市は海のほとりに位置していました。帝政期の1世紀から4世紀にかけて、アクイレイアは交易都市として繁栄し、最盛期には10万人を超える人口を擁する世界有数の都市となりました。しかし、5世紀以降、西ゴート族やフン族などの侵攻により、たびたび破壊され、再建のたびに都市は規模を縮小していきました。

古代都市アクイレイアの遺跡は、何世紀にもわたって「採石場」として利用され、石材が持ち去られました。そのため、地上には古代ローマ時代の建造物はほとんど残っていません。しかし、発掘調査によって一筋の街路や市壁の北西部が発見されており、当時の都市の様子を垣間見ることができます。市内の国立考古学博物館には、2000点以上の碑文、像、地元で生産されたガラス製品などの遺物や、貨幣などが収蔵されています。発掘調査はまだ終わっておらず、その全貌は明らかになっていませんが、古代ローマにおける最大の都市の一つであったと考えられています。

アクイレイア大聖堂

中世に入っても、アクイレイアはこの地域における中心都市としての地位を保ち続けました。553年にはアクイレイア大司教が総大司教に昇格し、その権威は増大していきました。アクイレイア総大司教は、分裂や移転などの曲折を経ながらも高い宗教的権威を得て、現在のイタリア北東部に広大なアクイレイア大司教領を所有していました。世俗の領土は1445年にヴェネツィア共和国によって没収されましたが、アクイレイア総大司教は1751年に正式に廃止されるまで続きました。

総大司教の座所として建設されたのが総大司教座聖堂です。現在のアクイレイア大聖堂は1031年に総大司教ポッポによって、元の聖堂跡地に再建されたものです。その後、1379年ごろに総大司教マルカドによってゴシック様式に改修されました。

大聖堂は、陸屋根を持つバシリカ式聖堂です。ロマネスク様式とゴシック様式のファサードは、柱廊玄関で「異教徒の聖堂」や5世紀の洗礼堂の遺跡と繋がっています。内部は一つの身廊と二つの側廊からなり、4世紀以来のモザイク模様の敷石が目を引きます。天井は1526年に作られた木造です。後陣の区画にある聖ペトロ礼拝堂（4世紀）、後陣それ自体（11世紀）、クリプト（12世紀）など、様々な時代のフレスコ画を見ることができます。特にクリプトは「フレスコ画のクリプト」とも呼ばれ、アクイレイアにおけるキリスト教共同体の起源や、アクイレイア初代主教ヘルマゴラスの物語が描かれています。

大聖堂の外部には、9世紀の鐘楼と後陣の後ろ側に、第一次世界大戦で亡くなった10人の無名戦士の墓が建てられています。

「総大司教」「総主教」の訳語について

「総主教」は正教会における"Patriarch"の訳語であり、「総大司教」はカトリック教会における"Patriarch"の訳語です。アクイレイアの"Patriarch"はローマ教皇を中心としていた西方教会に属してきたため、本項では「総大司教」の訳語を採用しています。

登録基準

この世界遺産は、以下の登録基準を満たして登録されました。

(3) 現存する、または消滅した文化的伝統や文明の、唯一の、または少なくとも稀な証拠。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積、または景観の優れた例。
* (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰、または芸術的・文学的作品と直接的または明白に関連するもの。

これらの基準は、古代遺跡の考古学的価値と、中世初期におけるキリスト教の中央ヨーロッパへの拡大に対するアクイレイア大聖堂の貢献が評価されたものです。

もう一度検索