アクティブ・センター・ディファレンシャル

アクティブ・センター・ディファレンシャル (ACD) の仕組みと特徴

三菱自動車が開発したACD（アクティブ・センター・ディファレンシャル）は、電子制御による高度な4輪駆動システムです。一般的なアクティブディファレンシャルとは異なり、前後車軸へのトルク配分を常に50:50に固定。その上で、センターデフの結合状態を精密に制御することで、優れたトラクション性能と操縦安定性を両立しています。

ACDの中核となるのは、トランスファーとセンターデフの間に配置された電子制御油圧ポンプと多板クラッチです。ハンドル角、車輪の速度、ブレーキ状況、ヨーレイト（回転角速度）といった車両状態に関する情報を、専用CPUが統合的に処理。これに基づいて油圧ポンプが作動し、多板クラッチの結合度合いをリアルタイムで変化させます。

このシステムは、単に前後輪のトルク配分を変えるだけでなく、センターデフの結合状態を変化させることで、滑りやすい路面や急旋回時における車両挙動を緻密に制御します。前後輪いずれかの駆動力が失われるような状態（2WD状態）になることはなく、減速時にも効果を発揮します。

さらにACDは、一般的なVCU式LSDよりも高い結合力を持つ点が特徴です。油圧ポンプの作動圧力を調整することで、センターデフの結合状態を、完全直結から完全フリーまで幅広く制御できます。そのため、あらゆる路面状況や運転状況に対応できる高い適応性を備えています。サイドブレーキを作動させると、センターデフの作動制限をフリーにすることも可能です。

ACD搭載車種

ACDは、三菱自動車の高性能車種に多く搭載されました。代表的な車種としては以下のものがあります。

ランサーエボリューションVII
ランサーエボリューションVII GT-A
ランサーエボリューションVIII
ランサーエボリューションVIII MR
ランサーエボリューションIX
ランサーエボリューションIX MR
ランサーエボリューションワゴン
ランサーエボリューションワゴン MR
ランサーエボリューションX
ギャランフォルティスラリーアート

これらの車種は、ACDによる高度な4輪駆動制御により、優れた走行性能と操縦安定性を発揮しました。

ACDと他の4WDシステムとの比較

ACDは、三菱自動車独自の4WDシステムであるS-AWC（Super All Wheel Control）の一部として機能するシステムです。S-AWCは、ACDに加えてAYC（アクティブ・ヨー・コントロール）などを統合制御することで、より高度な車両挙動制御を実現しています。

ACDは、前後トルク配分を常に50:50に固定している点で、他のアクティブディファレンシャルシステムとは異なります。他のシステムでは、状況に応じて前後トルク配分を可変させるものが一般的ですが、ACDはセンターデフの制御に焦点を当てることで、シンプルながらも効果的な4輪駆動制御を実現しています。

まとめ

ACDは、電子制御による精密なセンターデフ制御によって、優れたトラクション性能と操縦安定性を両立した、三菱自動車独自の4WDシステムです。常に50:50の前後トルク配分を維持しながら、路面状況や運転状況に合わせてセンターデフの結合度合いを変化させることで、ドライバーの意図に忠実な車両挙動を実現しています。数々の高性能車に搭載された実績は、その高い性能と信頼性を証明しています。

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