アシナゴラス (コンスタンディヌーポリ総主教)

アシナゴラス1世：正教会の指導者、教会一致への貢献

アシナゴラス1世（1886年3月25日 - 1972年7月7日）は、ギリシャ正教会のコンスタンディヌーポリ総主教として、20世紀の教会に大きな影響を与えた人物です。本記事では、彼の生涯、アメリカ大主教としての活動、そして何よりも特筆すべきカトリック教会との関係改善への貢献について解説します。

生涯と初期の活動

アシナゴラスは、現在のギリシャ領であるイピロス地方のヴァシリコ村で、アリストクリス・マテウ・スピルーとして生まれました。コンスタンディヌーポリ総主教庁傘下のハルキ島の神学校で学び、1910年に輔祭に叙聖。ペラゴニア主教区の大執事、アテネのメレティオス大主教の首輔祭を経て、コルフ主教を務めました。この間、アメリカを訪問し、ギリシャ正教の文書館で神学研究の資料調査に従事しました。

在米ギリシャ正教会大主教として

1931年、アシナゴラスは在米ギリシャ正教会の大主教に選出され、アメリカに赴任します。当時の教区は、大主教派とヴェニゼロス派の対立により分裂状態にありました。アシナゴラスは、教会管理の中央集権化、主教の権限縮小、正教会コミュニティとの協力などを通じて、教区の統一と安定に尽力しました。また、聖職者と信徒のコングレスの担当分野を広げ、聖十字神学校を設立するなど、教育と組織の充実に貢献しました。1933年にはニューヨークの至聖三者大聖堂の聖成式を執り行い、同大聖堂を「アメリカのヘレニズムを代表する大聖堂」と呼びました。

コンスタンディヌーポリ総主教として

1948年、アシナゴラスはコンスタンディヌーポリ総主教に選出され、トルコのイスタンブールに着座しました。総主教として、彼は世界教会協議会（WCC）を通じて、エキュメニズム（教会一致運動）に積極的に関与しました。

カトリック教会との歴史的和解

アシナゴラスの最も重要な功績の一つは、カトリック教会との関係改善への取り組みです。彼はパウロ6世と会談を重ね、1965年には1054年以来続いていた相互破門の取り消しという歴史的な出来事を実現しました。これは、東西教会の分裂を終わらせるものではありませんでしたが、両教会の和解への強い意志を示すものでした。しかし、このエキュメニズムへの取り組みは、正教会内の保守派から強い批判を受けました。

死去

アシナゴラス1世は1972年7月6日、腰椎骨折で入院した翌日にイスタンブールで腎不全のため永眠しました。87歳でした。彼の遺体は、ブラケルナエの聖母マリア教会の敷地内墓地に埋葬されました。

アシナゴラス1世は、激動の20世紀において、正教会の指導者として、また教会一致運動の推進者として、重要な役割を果たしました。彼の功績は、今日においても高く評価されています。

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