アシュランド級ドック型揚陸艦

アシュランド級ドック型揚陸艦は、アメリカ海軍が運用していたドック型揚陸艦の艦級です。準同型艦として、主機関を蒸気タービンに改正したカサ・グランデ級がありますが、こちらも本級の一部として分類されることがあります。

来歴

イギリス海軍は、大陸反攻作戦を想定し、1940年ごろより各種揚陸艦艇の開発に着手しました。その結果、車両人員揚陸艇（LCVP）や機動揚陸艇（LCM）などの上陸用舟艇、戦車などの重装備を揚陸できる戦車揚陸艇（LCT）、航洋性を向上させた戦車揚陸艦（LST）などが開発されました。

しかし、上陸用舟艇は母艦のダビットから吊り下ろして発進させるため、発進に手間がかかり、同時発進数が限られる上に荒天時の運用が難しいという問題がありました。また、LSTは非常に有用でしたが、門扉を有する特殊な艦首形状のため速力が遅いという欠点がありました。

そこで、同時に多数の上陸用舟艇を運用できる艦として構想されたのが戦車揚陸艇母艦でした。当時のイギリスでは工業力の制約から、このような新コンセプト艦の建造は難しく、実際の建造はアメリカで行われることになりました。これによって建造されたのが本級であり、アメリカ海軍ではドック型揚陸艦（LSD）と称されました。

設計

本級の設計は、浮き乾ドックを基に、前方に艦首部、後方にヒンジ式のゲートを設けて自航可能にしたものとなっています。ウェルドックを中心として組み立てられており、ドック前半部を跨ぐ形で架せられた上部構造物には、主に居住区が設けられました。一方、ドック下の船体には機関部やバラスト・燃料タンクが配置されました。また、ドック漲水時の船体の安定性を保つため、ドックの両側に防水区画を配する必要があったことから、ここにも居住区やバラストタンクのほか、機関区画への給排気スペースが設けられました。

ウェルドックは長さ118メートル×幅13メートルと、艦全長の81パーセント強に及ぶ長大なものとなっています。上陸用舟艇の発進・収容は、バラストタンクに注水して船体後部を下げ、ドック内に漲水することで行われます。戦車揚陸艇（LCT）であれば3隻、機動揚陸艇（LCM）であれば14隻を収容できました。自由水の影響を抑えるため、ドックの中ほどには中間ゲートが設けられていました。

上部構造物後方にあたるドック後半部上方にも仮設の甲板を架することで、多くの車両を露天搭載することができました。この仮設甲板や揚陸艇との物資揚降のため、煙突付近の両舷には力量35トンのクレーンが設けられていました。

当初設計では蒸気タービン主機関とされていましたが、減速機の生産力不足のため、本級ではレシプロエンジンが採用されました。

同型艦

アシュランド (USS Ashland, LSD-1)
ベル・グローヴ (USS Belle Grove, LSD-2)
キャビン・ティル (USS Cabildo, LSD-16)
コロニアル・ビーチ (USS Colonial Beach, LSD-18)
Comstock (LSD-19)

参考文献

globalsecurity

外部リンク

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