アステロディアー

ギリシア神話において、「アステロディアー（古希: Ἀστεροδία, Asterodiā）」という名前は、一人の特定の人物を指すわけではなく、複数の異なる女性に与えられています。長音を省略してアステロディアと表記されることもありますが、それぞれが異なる系譜や物語に登場します。

主に知られているのは、エーリス地方の王エンデュミオーンの妻、ポーキス地方の王デーイオーンの娘、コーカサスのニュンペー、そしてペーネロペーの母親とされるエウリュピュロスの娘です。以下にそれぞれの人物について詳しく説明します。

エンデュミオーンの妻

一説には、このアステロディアーはエーリス地方の王エンデュミオーンの配偶者であったと伝えられています。彼女は、パイオーン、エペイオス、アイトーロス、そしてエウリュキュダーの母とされています。しかしながら、エンデュミオーンの妻とされる女性については様々な伝承があり、水のニュンペーあるいはイーピアナッサとされることもあれば、月の女神セレーネー、アムピクテュオーンの子イトーノスの娘クロミアー、あるいはアルカスの娘ヒュペリッペーなど、複数の名前が言及されています。

デーイオーンの娘

このアステロディアーは、ポーキス地方を支配した王デーイオーンと妻ディオメーデーの間に生まれた娘です。彼女には、アイネトス、アクトール、ピュラコス、ケパロス、ニーソスといった兄弟がいました。彼女はアイギーナ島の王アイアコスの息子であるポーコスと結婚し、クリーソスとパノペウスという双子の息子をもうけました。この双子については、母親の胎内にいる頃から互いに仲が悪く、争っていたという興味深い伝説が語られています。

コーカサスのニュンペー

コーカサス地方に住むニュンペー（精霊）の一人もまた、アステロディアーという名で呼ばれています。彼女はコルキスの王アイエーテースとの関係を持ち、その間にアプシュルトスという息子を産みました。詩人ロドスのアポローニオスが伝えるところによれば、このアプシュルトスが生まれたのは、アイエーテースが正妃であるオーケアノスの娘エイデュイアと結婚するよりも前の出来事であったとされています。

エウリュピュロスの娘

別の伝承体系においては、エウリュピュロスという人物の娘とされるアステロディアーが存在します。彼女は、後にオデュッセウスの貞淑な妻として広く知られるペーネロペーの母親であり、イーカリオスと結婚したと語られています。この説は、ペーネロペーの系譜に関する複数の伝え方の一つとして挙げられています。

このように、「アステロディアー」という名前を持つ女性たちは、ギリシア神話の様々な物語の中で、王の妻として、英雄の母として、あるいは神聖な存在であるニュンペーとして登場します。それぞれの人物は異なる背景を持ち、神話の豊かな世界を構成する一員となっています。

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