イーカリオス

イーカリオス：ギリシア神話における二つの物語

ギリシア神話には、イーカリオスという名前を持つ人物が複数登場しますが、特に有名なのは以下の二人です。

1. アッティカのイーカリオス

アッティカのイーカリオスは、アテーナイの王パンディーオーンの時代に生きた神話的な人物です。彼は、ディオニューソスが初めてアッティカに訪れた際、彼を温かく迎え入れたと伝えられています。

ディオニューソスとの出会い: イーカリオスの歓待に応え、ディオニューソスは彼にブドウの苗木とブドウ酒の醸造法を授けました。イーカリオスはこれに喜び、ブドウ酒を人々に広めようとしました。

悲劇: ブドウ酒を初めて体験した羊飼いたちは、酔いを恐れて毒を盛られたと勘違いし、イーカリオスを殺害してしまいます。娘のエーリゴネーは、愛犬マイラと共に父を探し、墓を発見すると、悲しみのあまり自ら命を絶ちました。

神々の怒り: ディオニューソスはイーカリオスとエーリゴネーの死に激怒し、アテーナイの女性たちを狂気に陥れました。神託により事件の原因を知ったアテーナイ人は、イーカリオスを殺害した羊飼いを処罰し、エーリゴネーを悼む祭りを行いました。また、神々はイーカリオス、エーリゴネー、マイラを天に上げ、それぞれうしかい座、おとめ座、シリウスに変えたとされています。

2. ペーネロペーの父イーカリオス

もう一人のイーカリオスは、ペーネロペーの父として知られています。彼の家系にはいくつかの説があります。

出自: 一説には、彼はアイオロスの子ペリエーレースとペルセウスの娘ゴルゴポネーの子、またはキュノルテースの子ペリエーレースとゴルゴポネーの子とされ、アパレウス、レウキッポス、テュンダレオースと兄弟であるとされます。別の説では、キュノルテースの子ペリエーレースの子オイバロスと水のニュムペーのバテイアの子で、テュンダレオース、ヒッポコオーンと兄弟であるとも言われています。

家族: 彼は水のニュムペーのペリボイアとの間に、トアース、ダマシッポス、イメウシモス、アレーテース、ペリレオース、そして娘のペーネロペーとイプティーメーをもうけました。また別の説では、妻はリュガイオスの娘ポリュカステーであり、ペーネロペーのほかにアリュゼウス、レウカディオスという息子がいたとも言われています。

亡命: イーカリオスとテュンダレオースは、ヒッポコオーンとその子供たちによってラコーニアから追放され、アイトーリア地方のプレウローンの王テスティオスの庇護を受けました。彼らはテスティオスの戦争を助け、ヘーラクレースがヒッポコオーンを滅ぼした後、ラコーニアに帰還しました。ただし、ストラボンによれば、イーカリオスはアカルナーニアーに残ってポリュカステーと結婚したとされています。

ペーネロペーの結婚: ペーネロペーはイタケー島の王オデュッセウスと結婚しました。この結婚は、テュンダレオースが娘ヘレネーの結婚相手選びに困っていた際、オデュッセウスがイーカリオスに取りなす代わりに、ヘレネーの夫の決定をめぐり争わないという妙案を授けたことがきっかけでした。イーカリオスは、ペーネロペーをオデュッセウスに与えましたが、後にラコーニアに留まらせようとしました。しかし、ペーネロペーがオデュッセウスについていくことを選んだため、イーカリオスは彼女の意思を尊重しました。

『オデュッセイア』における役割: オデュッセウスがトロイア戦争から帰国しない間、ペーネロペーに多くの求婚者が現れました。イーカリオスは、ペーネロペーに求婚者の一人であるエウリュマコスとの結婚を強く勧めたとされています。

系図

[系図はここに記載することが望ましいですが、テキスト形式での表現は困難なため、説明にとどめます。]各資料により、イーカリオスの系譜にはいくつかの異同が存在します。

脚注

[脚注は必要に応じて記述してください。]

参考文献

アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫（1953年）
ストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌』飯尾都人訳、龍渓書舎（1994年）
パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎（1991年）
ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照男訳、講談社学術文庫（2005年）
ホメロス『オデュッセイア（上・下）』松平千秋訳、岩波文庫（1994年）
高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店（1960年）

これらの文献は、イーカリオスに関するより詳しい情報を提供します。彼の物語は、ギリシア神話の複雑さと深さを示す一例と言えるでしょう。

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