ロドスのアポローニオス

アポローニオス・ロドス：古代ギリシアを代表する叙事詩人

紀元前3世紀の古代ギリシアに活躍したアポローニオス・ロドスは、叙事詩人であり、学者、そしてアレクサンドリア図書館の図書館長として知られる重要な人物です。彼の名を不朽のものとしたのは、イアソンとアルゴナウタイの冒険を描いた叙事詩『アルゴナウティカ』です。この作品は、叙事詩史上に燦然と輝く金字塔として、後世の詩人に多大な影響を与えました。

謎に包まれた生涯

アポローニオスの生涯については、断片的な情報しか残されていません。彼の出身地は、アレクサンドリアとする説と、ナイル川河口のナウクラティスとする説があり、定説は存在しません。彼の父はシレウスかイレウス、母はロデという説がありますが、ロデは「ロドス人女性」という意味であり、後世の付会である可能性が高いです。

主な情報源は、『アポローニオスの生涯』と題された2つのテキスト、10世紀の百科事典『スーダ辞典』、そして紀元前2世紀のオクシリンコス・パピルス1241です。特にオクシリンコス・パピルス1241は、アポローニオスと同時代に近く、信頼性の高い情報源として貴重な役割を果たしています。しかし、これらの情報源からも、彼の生没年や私生活の詳細は明らかになっていません。

カリマコスとの師弟関係と確執

アポローニオスは、著名な詩人で学者のカリマコスに師事したと伝えられています。しかし、両者の間には、激しい確執があったという説も存在します。カリマコスの詩『イビス』がアポローニオスへの批判であるという説や、『ギリシア詞華集』に収録されたアポローニオスのエピグラムがカリマコスを嘲笑する内容であるという説があります。

一方で、アポローニオスの伝記には、両者の友情を強調する記述もあります。この確執の真相は、現在も研究者の間で議論が続いており、結論は出ていません。当時の文学界の激しい競争と、伝記における誇張や脚色を考慮すると、複雑な関係性だったと推測されます。

アレクサンドリア図書館長としての功績

アポローニオスは、アレクサンドリア図書館の図書館長を務めたと複数の文献で伝えられています。オクシリンコス・パピルス1241は、エラトステネスがアポローニオスの後任であったことを示唆しています。このことから、アポローニオスは少なくとも紀元前246年まで図書館長を務めていたと推測できます。『スーダ辞典』は、逆にアポローニオスがエラトステネスの後任であったと記していますが、これは史実とは矛盾するため、信頼性に欠けます。

ロドス島との関わり

アポローニオスは、人生のある時期をロドス島で過ごしました。このため、「ロドスの」という称号を得ましたが、実際にロドス島出身だったわけではありません。ロドス島での生活は、彼の人生にどのような影響を与えたのかは、現在も謎に包まれています。ロドス島で亡くなったという説と、アレクサンドリアに戻って亡くなったという説があり、どちらが正しいのかは不明です。

『アルゴナウティカ』とその評価

アポローニオスの代表作である『アルゴナウティカ』は、古代においては必ずしも高い評価を得ていたわけではありませんでした。しかし、近年の研究では、その文学的価値が見直され、後世の詩人、特にウェルギリウスへの影響が指摘されています。現代の叙事詩研究においても、重要な作品として位置づけられています。

まとめ

アポローニオス・ロドスは、その生涯の多くが謎に包まれた人物ですが、『アルゴナウティカ』という傑作を残した重要な詩人です。アレクサンドリア図書館長としての職務やカリマコスとの関係、ロドス島での生活など、彼の生涯は多くの謎を含んでおり、今後も研究が続けられていくでしょう。彼の作品は、古代ギリシア文学の理解を深める上で重要な手がかりとなります。そして、彼の生涯の謎解きは、古代世界の魅力を今なお私たちに伝えています。

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