アストンマーティン・ヴァルカン

アストンマーティン・ヴァルカン

アストンマーティンのヴァルカン（Vulcan）は、2015年に導入された、サーキット走行専用の高性能スポーツカーです。この車両は、わずか24台が製造され、販売価格は約2億6000万円という希少性を持つ超プレミアムモデルです。公道走行が禁じられており、サーキットでの利用に特化しています。

仕様

ヴァルカンの車体は、アルミ合金製のシャシーとカーボンファイバー製のボディが組み合わさった構造で、軽量でありながら高い強度を実現しています。サスペンションシステムは、アンチダイブジオメトリが採用されたプッシュロッドサスペンションで、ダンパーとアンチロールバーは前後の調整が可能なマルチマティック製のダイナミックサスペンションスプールバルブ（DSSV）が装備されています。これにより、道路状況や走行スタイルに応じた柔軟なセッティングが可能です。

さらに、ドライバーはアンチロックブレーキシステムや可変式トラクションコントロールを自ら調整でき、性能を最大限に引き出せる設計となっています。エンジンは、7.0リットルのV型12気筒自然吸気エンジンで、最高出力は831ps（7,750rpm）、最大トルクは800N・m（6,500rpm）を発生します。また、Xtrac製の6速シーケンシャルトランスミッションと組み合わせることで、ダイレクトな操縦感を提供します。乾燥重量は1,350kgで、カーボンセラミック製のブレーキと、フロントが380mm、リアが360mmといったミシュラン製タイヤ（PILOT SPORT CUP2）が装備されています。

サーキットでの利用条件

ヴァルカンは、フェラーリのXXプログラムやマクラーレンのP1 GTRといった他のサーキット専用車両と同様に、メーカーの承認を受けなければイベントで使用できませんが、購入者はこの車両を個人として所有することができます。これは、他の特別仕様車との差異を見せる特徴の一つです。

ヴァルカン AMR Pro

2017年には、ヴァルカンのAMR Proパッケージが発表されました。このパッケージは、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで披露され、空力性能がさらに向上しました。デュアルエレメントのリアウイングや大型カナード、ターニングベーンなどを追加し、正常仕様よりもダウンフォースが27％向上しています。エンジン自体は変更されていませんが、ギア比が加速性能を向上させるために調整されています。

ロードカー仕様

ヴァルカンの公道走行が可能な仕様として、イギリスのRMLグループにより改良版が発表されました。このロードカー仕様では、地上高の調整や外観の改良が行われ、フロントフードに新しいヘッドライトが装備されるなど、サーキット仕様とは異なる外観になっています。サスペンションや冷却システムも見直され、公道走行に適したセットアップにされています。さらに、インテリアでは視認性を高めるためにシートとステアリングが改善され、イモビライザーやワイパーも標準装備されています。

結論

ヴァルカンは、その性能やデザイン性において特別な地位を占める車両です。サーキット専用ながら、一部の仕様では公道走行が可能であり、その希少性は高い人気を誇っています。アストンマーティンの技術とデザインの結晶として、モータースポーツ愛好者の憧れの的です。

もう一度検索