アストンマーティン・DB6

アストンマーティン DB6：英国が生んだ至高のグランドツーリスモ

アストンマーティン・ラゴンダ社が1965年から1970年にかけて製造したDB6は、同社の歴史において重要な位置を占めるグランドツーリスモです。その優雅なスタイルと洗練された走りは、多くの自動車愛好家を魅了し続けています。DB5の後継モデルとして登場したDB6は、事実上、DB5の改良版と言えるでしょう。1965年10月、ロンドンモーターショーで華々しくデビューを飾りました。

バリエーションと進化

DB6は標準モデルに加え、よりパワフルなエンジンを搭載した「ヴァンテージ」と、オープンエアの愉しみを提供する4人乗りドロップヘッドクーペ「ヴォランテ」を用意。ヴァンテージは、エドゥアルド・ウェーバー製キャブレターの採用により、エンジンの出力が向上しました。特に注目すべきは、1966年発表のヴォランテです。それ以前のDB5をベースとしたヴォランテは2人乗りでしたが、DB6のヴォランテは4人乗りとなり、より実用的なモデルへと進化しました。

1969年7月には、後継モデルであるDBSの部品を採用した改良版「DB6 Mk2」が登場。Mk2もヴォランテとヴァンテージが用意され、さらに限定29台のみ製造された「ヴァンテージ・ヴォランテ」もラインナップに加わりました。また、英国のコーチビルダー、ハロルド・ラドフォードの手によるシューティングブレークも5台、もしくは6台製作されたと伝えられています。

1970年に生産が終了したDB6ですが、翌年には創業者であるデビッド・ブラウンが経営から退き、「DB」という名称は、1994年に登場したDB7まで使用されることはありませんでした。この空白期間が、DB6をさらに希少で特別な存在にしています。

機構とスタイリング

DB6は、DB5と同様の3,995cc水冷直列6気筒DOHCエンジンを搭載。標準モデルは282bhpを、ヴァンテージはウェーバー製キャブレターと圧縮比の向上により325bhpを発揮しました。トランスミッションはZF製5速MTが標準で、アストンマーティンとしては初めてボルグワーナー製ATもオプションで選択可能でした。

快適性も重視されており、同社初となるZF製パワーステアリングとエアコンがオプション設定されました。DB6 Mk2ではパワーステアリングが標準装備となりました。さらに、アメリカなどの右側通行の国向けには左ハンドル仕様も用意されました。

ボディは、カロッツェリア・トゥーリングのスーパーレッジェーラ製法で製作。DB5と比較して、フロントウインドシールドは寝かせられ、ル・マン24時間レースで実績のあるカムテールが採用されました。後部座席の居住性向上のため、ホイールベースはDB4、DB5より95mm延長され、2,585mmとなりました。バンパーも2分割タイプに変更されています。これらの改良により、DB6はDB5よりも洗練されたデザインと優れた居住性を獲得しました。

王室との関わり

DB6は、英国王室とも深いつながりを持っています。チャールズ3世は21歳の誕生日にDB6を贈られ、私的な愛車として使用していました。ウィリアム王子とキャサリン妃の結婚式では、ブルーメタリックのDB6 Mk2ヴォランテがバッキンガム宮殿から公邸への移動に使用され、「JU5T WED」という、結婚をかけた洒落の効いたナンバープレートが注目を集めました。

まとめ

アストンマーティンDB6は、卓越したエンジニアリングと優雅なデザインを融合させた、真のグランドツーリスモです。その希少性と王室との関わりも相まって、現在ではコレクターアイテムとして高い価値を持つ名車となっています。DB5の進化形として生まれたDB6は、アストンマーティンの歴史において重要なモデルであり続け、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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