シャルマネセル1世

シャルマネセル1世（在位：紀元前1274年 - 紀元前1245年）は、中アッシリア王国時代にアッシリアを統治した王です。父であるアダド・ニラリ1世の後を継ぎ、王位に就きました。彼の治世は、ハニガルバト（ミタンニ）の完全征服という大きな功績によって特徴づけられます。

即位直後、シャルマネセル1世はウラルトゥで発生した反乱に直面しますが、迅速かつ断固たる行動でこれを鎮圧しました。この成功を背景に、彼はハニガルバトの残存領土に目を向け、その征服を計画します。紀元前1263年、シャルマネセル1世はハニガルバトへの遠征を開始し、当時ヒッタイトの庇護下にあったハニガルバトの王シャトゥアラ2世を打ち破り、ハニガルバト全域をアッシリアの支配下に置きました。この勝利は、アッシリアの勢力拡大を決定づけるものでした。

ハニガルバトの征服は、周辺諸国に大きな影響を与えました。特にヒッタイト王ハットゥシリ3世は、アッシリアの急速な勢力拡大に強い危機感を抱き、バビロニア（カッシート朝）王カダシュマン・トゥルグと同盟を結び、アッシリアに対抗しようと試みました。さらに、エジプトとの関係を強化するため、自身の娘をエジプトに嫁がせ、対アッシリアの備えを進めました。

しかし、シャルマネセル1世はこれらの動きをものともせず、バビロニアとの戦いにも勝利し、アッシリアの拡大を止めることはできませんでした。彼の軍事的な才能と戦略的な手腕は、アッシリアを地域の大国へと押し上げる原動力となりました。

シャルマネセル1世は、軍事的な成功だけでなく、建築事業にも力を注ぎました。彼の治世中には、多くの大規模な建築プロジェクトが実施され、アッシリアの都市の景観を大きく変えました。アッシュール市では、アッシュール神殿を再建し、神々への信仰を深めました。また、カルフ（ニムルド）には第二王宮を建造し、王国の威信を高めました。これらの建築物は、アッシリアの繁栄を象徴するものとして、後世にまでその名を残しています。

シャルマネセル1世の死後、彼の息子であるトゥクルティ・ニヌルタ1世がアッシリア王位を継承しました。シャルマネセル1世の治世は、アッシリアが地域における影響力を確立し、強大な国家へと発展する上で重要な時期であったと言えるでしょう。彼の軍事的な成功と建築事業は、アッシリアの歴史に深く刻まれ、後世に語り継がれています。

もう一度検索